時代にタバコの煙をあてたロックバンド「The Jesus and Mary Chain」の話

<2016年11月21日 全編書き直し>

JesusMary.jpg
画像出典・http://www.tumblr.com/tagged/sidewalking?language=ja_JP

1977年、セックス・ピストルズはそれまでのオールド・ロックンロールをバケツをぶちまけるように塗り替えていった。そして70年代末、アンダーグラウンドに広がっていった「ポスト・パンク」の波紋……ライブハウスに溜まっていく暴力、シーンは新しい活気を求めていた。そこにひょっこりと現れたのが彼らだ。ジーザス&メリーチェイン(以下時々JAMC)。それはピストルズの登場から8年が経過した、1985年のことだった。甘いメロディに金切り音のようなノイズサウンド、ポップス黄金期である50 - 60年代に実った果実に神経毒を注ぎ込んだような世紀末的バブルガム・ポップス、デビューアルバム『Psychocandy』。幾多の暴動と共に巻き上がったセンセーショナルな衝撃は、たった一枚で彼らの名声を決定づけた。同時にそれは、オールドファッションになりかけていた音楽が、メソッドひとつで一瞬に息を吹き返す劇的な瞬間でもあった。その鮮烈な音楽性は、後のシューゲイザー、ノイズ・ポップ、90年代のオルタナティヴ・ロックへ広がっていき、今も大きな影響を与え続けている。


<完>


多分、このバンドについてまじめに書こうとするとこんな感じの紹介文が出来上がって終わる。概ね正しいと思うけれど、この記事では彼らをこんな感じには扱わない。実際、ロックの歴史上でジーザス&メリーチェインほど奇妙な立ち位置に置かれていったバンドはない。ノイズポップの元祖――そこにはヴェルヴェット・アンダーグラウンドがいる。シューゲイザーは――マイ・ブラッディ・バレンタインが金字塔を打ち立ててしまった(そもそもJAMCは甘いメロディとノイズの黄金律の発見こそ重要であれ、音的にはシューゲイザーでなくポストパンクやノイズパンクの亜種だ)。衝撃度――彼らは虚像のように膨れ上がった喧噪にまいってノイズの衣を早々に捨ててしまい、劇的な解散にも至らずひっそり解散し、よくあるパターンのひとつで今は時々再結成して稼いでいる。微妙。とても微妙なのだ。

『Psychocandy』以外で語るには、きっとJAMCはあまりに人間的過ぎた。じゃあ彼らは一作目が偶然革新的だっただけの凡百バンドだったのか?となると、そうは全く思わない。歴史に残るものができて、語り口が決まってしまっても、そこで何かが終わることはない。彼らの歴史には地味ーな続きもあるし、他の名作と呼ばれる作品群に比べてサイコキャンディは明らかにニセモノだし、この兄弟のバンド演奏に対する姿勢はクソ以外の何物でもないし、それと同時にこんなにクールなロックバンドもそうないのだ。そんな彼らの作品群について、ここでは少しずつ、ひとつずつ取り上げていこうと思っている。


メンバー
ジム・リード (ギター・ボーカル) 
ウィリアム・リード (ギター・ボーカル) 

二人は兄弟。この二人が今回の主役だ。

初めて聴くなら
面倒なのはいいから、結局どれが一番なの?という方には、この一枚をオススメする。『Barbed Wire Kisses』、邦題「キスは罠」。初期の編集盤だが、このバンドが「セックス・ピストルズ以来の衝撃」と言われた理由のすべてはこの一枚に集約されている。


でも、もう少し興味をもってもらえるなら、ディスコグラフィを眺めて、2、3枚アルバムを手に取ってみてほしい。テンプレートなキャッチコピーに落とし込まれる前のJAMCをどうぞ。

ディスコグラフィ(抜粋)
Psychocandy (1985) ★★★★
異常なノイズとポップメロディを混ぜ合わせてしまった、有名な名(迷?)盤。何はともあれジザメリといえば今作。
Darklands (1987) ★★★★★ 
限界状態から何とか作り上げた美しいアルバム。グッドソングの宝庫で、最高傑作説あり。
Automatic (1989) ★★★☆ 
自信をつけてしまい、半ば開き直ってワイルドにマンチェスター決めたりした転換作。
Honey's Dead (1992) ★★★★ 
ついにノイズを自己表現にまで高めた彼らの到達作。人気も高く、「Sundown」はこのバンドのベストトラックだと自分は思う。

Stoned & Dethroned (1994) ★★★
一気に素朴、アコースティックになった一作。悪くはないが曲数が多過ぎて非常にダレる。
Munki (1998) ★★★★
解散作。駄作ではないものの、安定というより停滞というような平凡な作……(14年時)と思っていたが、今の宅録インディロック勢を見ていると一つの理想形を体現している気もする。The Jesus and Mary Chainは結局、引きこもりで、社会になじむ気がなくて、無気力で……犯罪に興味のないアウトサイダーは、滅茶苦茶だけど、だから最高に歪な形のロックンロール・スターだったのだ。時代にタバコの煙を宛てたクールなギターロック。
     

タグ: アーティスト紹介記事

The Jesus and Mary Chain / Honey's dead (1992) 感想


ハニーズ・デッドハニーズ・デッド
(2007/05/23)
ジーザス&メリー・チェイン

商品詳細を見る

前作はあれだったけど、今作のジャケはあたり。ぼやけた質感がカッコいいです。

(佳曲)<太字(好み)<普通 赤太字は名曲 灰色は好きでない、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Reverence – 3:40
02. Teenage Lust – 3:06
03. Far Gone and Out – 2:51
04. Almost Gold – 3:19
05. Sugar Ray – 4:41
06. Tumbledown – 4:10
07. Catchfire – 4:47
08. Good for My Soul – 3:05
09. Rollercoaster – 3:46
10. I Can't Get Enough – 2:56
11. Sundown – 4:59
12. Frequency – 1:19

Total length : 42:39

総評・★★★★
自分たちの音楽性をしっかり見つめて作られた集大成的アルバム
前作オートマチックリリース後、やはり活動を停滞させていたジーザスアンドメリーチェイン。その間に音楽シーンはすっかり変わってしまい、彼らも最早若手ではなく、年季あるベテランアーティストという立場に置かれていた。かといってまた重圧に押しつぶされて…と言う事はなく、自分たちのスタジオを持った事もあって、今作の制作はマイペースにすすめられた。

前作に手応えを感じたのか、今作は彼らの作品の中で最も自信に満ち溢れたアルバムだ。音楽性としても、過去3作の要素がまんべんなく散らされており、集大成的内容となっている。ある程度やってきたバンドらしく、曲それぞれに対するアプローチに強い確信がうかがえるのが最大の特徴だ。余裕綽々で楽曲を繰り出していく様は頼もしいものの、中盤~後半が予定調和的すぎてダレるのが残念。とはいっても、ここまでこのバンドに付き合ってきた人ならそれくらい特に気になりはしないだろう。

何と言っても今作で特筆するべきなのは最終曲ひとつ前におかれたSundown

…続きを読む

     

タグ: 90s 40分台 秀作

The Jesus and Mary Chain / Automatic (1989)


オートマティックオートマティック
(2007/05/23)
ジーザス&メリー・チェイン

商品詳細を見る

シンプルすぎてあまり好きじゃないジャケ。なんというか…バブルっぽい?(意味不明)

(佳曲)<太字(好み)<普通 赤太字は名曲 灰色は好きでない、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Here Comes Alice – 3:53
02. Coast to Coast – 4:13
03. Blues from a Gun – 4:44
04. Between Planets – 3:27
05. UV Ray – 4:06
06. Her Way of Praying – 3:46
07. Head On – 4:11
08. Take It – 4:34
09. Halfway to Crazy – 3:40
10. Gimme Hell – 3:20
11. Drop – 1:58 (以下再発以降の追加曲)
12. Sunray – 1:34

total length : 43:26

総評・★★★☆
開き直り?自信をつけワイルドになった新生ジザメリ
二作目から導入されていた打ち込みを大々的に取り入れ、ジザメリの転機となった3作目。衝撃のデビューから早5年、もともと音楽性の幅が広い方ではない(と言うかフレーズアイデアが少ない)中で、どうやってこれからも音楽を続けていくかを考えた結果の転換だったんだろう。

抒情的な前作で感動的な復活を果たした彼らだが、そこで自信をつけてしまったのか、今作ではもう前作の苦悩なんてなかったかのように、めちゃくちゃワイルドである。なんといったって音が野太い。まさしく「メジャーのロックバンド」って感じの音。このアルバムは本当にやたらとテンションが高い。誰が聴いたって盛り上がりそうな(少なくとも当時は)曲調がズラリと並んでいる。歌詞はドラッグを意識したものが多いが、まぁー取り立てて書くようなこともない、昔ながらのロック歌詞といった感じで印象は薄い。

…続きを読む

     

タグ: 80s 40分台

The Jesus and Mary Chain / Darklands (1987) 感想 -プライベートな名盤

(2016/11/27 書き直し)

ダークランズダークランズ
(2007/05/23)
ジーザス&メリー・チェイン

商品詳細を見る

ファーストに引き続いてよく内容を表している。どこか孤立していて、おぼろげ、繊細な……。

太字(良い)>黒 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Darklands – 5:29 
02. Deep One Perfect Morning – 2:43
03. Happy When It Rains – 3:36
04. Down on Me – 2:36
05. Nine Million Rainy Days – 4:29
06. April Skies – 4:00
07. Fall – 2:28
08. Cherry Came Too – 3:06
09. On the Wall – 5:05
10. About You – 2:33

Total length : 35:51

絶望から始めよう
あのロック史に名を残した、喧噪の大ヒット作『Psychocandy』に寄せて――。彼らは疲労しきっていた。確かに作品は売れた。生活は一変した。だがそこにあったものは、彼らの性分とはまるっきり反対のものだった。不敵な笑みをもって騒ぎを煽っていたころの面影はなく、彼らは今作の前にこんな発言をイギリスの音楽誌に寄せている。

「することといえば、家の中に閉じこもって、たまに誰かに電話してはどうやって自殺しようかなどと落ち込んだ会話をするばかり。ツアーでいろんな所にいっても、彼の眼にはホテルが変わったこととTVセットの違いくらいしか映らない。」
――NME紙より


彼らは恋人と共に世間から逃げ、ひたすら時がすぎていくのをただ待っていた。そうしたどん底の中からなんとか発売にこぎ着けたのが、今作ダークランズである。

…続きを読む

     

タグ: 80s 30分台 傑作 まとまり

プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

カテゴリ
Twitter
リンク
クリックで展開
NewCcounter