Syrup16g / COPY (2001) 感想 - ロックスターすら描けない

COPYCOPY
(2001/10/05)
syrup 16g

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負け犬の犬ってことでいいのかな…?なんというかインディバンドっぽいジャケ。

(佳曲)<太字(好み)<普通 赤太字は名曲 灰色は好きでない、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. She was beautiful
02. 無効の日
03. 生活
04. 君待ち
05. デイパス
06. 負け犬
07. (I can’t)change the world
08. Drawn the light
09. パッチワーク 
10. 土曜日


総評・★★★★★
パンクやニルバーナとは全く違う質のネガティブの吐き出し方

90年代初頭、ニルヴァーナが空前の大ブレイクを果たした。カート・コバーンは極端な静と動をつかったギターワークで自分の感情を表現し、(別に彼が発明したわけではないが)その方法論は大衆に受け入れられ、様々なバンドに広がっていった。ネガティヴな言葉を、轟音でかき鳴らすスタイル

シロップ16gもネガティヴと言われるような歌詞が多いバンドです。でも、メインコンポーザー五十嵐の歌詞は、それらとは少し異なった質を持ってるように思ってて。カートは負の感情こそ強いものの、漠然とながらスターになるという野望があった。それが叶ってから、プレッシャーと周囲の変化にやられて精神を病んで行ってしまったわけですが、Nevermindに至る道程には、冴えなかった少年が音楽を手に取ることで認められていき、夢へと動いていくような推進力があった。五十嵐も、その名も「夢」という曲で「有名になりたいな」という一節は出てきます。しかし彼の歌詞は、すでに諦めて(又は終わって)しまった、或いは俗にいう希望的な前提を否定して入る曲が多い。ロックにありがちな「周りの奴らはクソだ!」でも、「俺が世界を変える」というスタンスでもない。さらに言えば、ART-SCHOOLのように自分を短編映画の主役か何かにしてみたり、"君"に過剰な希望を見出そうともしない。根本的に諦めて(投げて)しまった、でも生きているひとの詩

と、仰々しく書きましたが、ぶっちゃけると、ダメ人間と形容されるべき歌詞が並ぶだけなんですよね。でも、五十嵐はバンドを持っていた。中畑大樹、佐藤元章っていうメンバーがそこにいてくれていた。だからシロップは、かなり大げさに例えをもってくるなら、80s_UK最大の毒であり華だった、ザ・スミスのようなバンドマジックを得ることができた。



カッコ良くも美しくもなくただひれ伏す

そろそろ締めに向かっていきます。ここが一番大事なところだと思うんですが、Syrup16gの曲は、そうしたネガティヴな言葉を伝える以前に、単純にバンドミュージックが好きで曲作りを始めているのがありありと伝わってきます。まずは、自身が憧憬とする「80sニューウェーブ~ 00sオルタナ寄りの曲を作ろう」と。「さてどんなことを歌おうか?」そして、「これしかでてこねぇ……。」そんな具合、きっと。ある意味もっとも救いようがない酷い有様だけど、個人的にこの吐き出され方で浮かんできた歌詞が、どんな音楽より重く響いてくる。

本気だしてないままで終了です」「生活はできそう?それはまだ 計画を立てよう それも無駄」「世界がどうなっていようと 明日がどうなっていようと 僕は楽したいのです」それはカートのように激情のトリガーとなるでも、別にスミスのように美しく聴かせるでも、エモバンドのように抒情的に響かすでもない。ただただ歌詞はリアルにひれ伏している。でもその平行線上で、最高のバンドサウンドも走っている。これがシロップ16gの音楽です。だから時々湧いてくる、後者の最高さにすべてを委ねたような――「翌日」とか、「Reborn」の輝きもすごい。逆に、前者に倒れ込んでしまった「coup d’Etat」の破滅加減も底なし。

で、話を戻しますが、『COPY』はまさに二つの間をひた走る一作です。中途半端?いやいや……。何かが報われるでも、発散されるでもなく、ひたすら良いメロディとバンドサウンドが流れて、何一つ決着もつかないまま「土曜日なんて来るわけない」で終わるこの一枚は、ドス黒くも無色透明でも虚無でもない異物、それでいて日常でしかない、そこそこ自由に動けるだけの檻みたいな原風景を持ちました。あんまりこの言葉を使うのも気に食わないんですが、今作だけを手に取るなら、シロップは「鬱バンド」と言えるかと思います。やりたいことはやれているのに、全能感一切なくコレが出来上がってしまうのは、凄いバランス感覚で、ひどく切実です。多くのロックバンドと同じく、バンドの特性、スタイルが詰まった名ファースト。

Rating : 88 / 100

楽曲というよりバンド論みたいになってしまいましたが、今回はこんなところで。

     

Syrup16g[パッチワーク]


虚しさ・悲しさ・切なさでもない何か
上昇、下降、一人リフと、スリーピースらしく曲を跳ねさせていくベースラインが魅力的な一曲です。それだけで十分好きな曲なんですが、やっぱり歌詞。歌詞が響きます。(余談ですが、個人的にシロップに「良い歌詞」って表現はなんか似合わない気がします。なんとなくですが)

多分楽したいのです
世界がどうなってようと 明日がどうなってようと 僕は楽したいのです
他人のことなんて知りません ここから逃げたいのです



なんて歌詞から始まるこの曲。多くの人が共感できることでしょう。ここまでならまだいいのですが、ダルな展開から歌詞がどんどん重くなっていきます。

光などなくて 命だけあって 少しの夢
素晴らしくなくて 痛みだけあって 少しの憂い
一体いつまでこうやって 一寸先もわかんなくて
言ってることすらなんだったっけなぁ



誰もがたまに陥る、俺なにやってんだろうな状態。深い憂鬱じゃなく、ちょっと寝っ転がってウダウダ悩むような感覚。こういう時って本当(無駄な位)色々考えちゃうんですよね。この曲は基本的にそういう時の歌だと思います。個人的にダメージでかいのがBメロ。

後のページは途切れた記憶 その他の思い出 理想と幻想 切って貼ってな



パッチワーク。複数の布片を縫って一つの布にする事。
人の記憶に対しての、このパッチワークって表現はまさにという感じ。終盤、理想と幻想 切って貼って を何度も繰り返した後、五十嵐は少し音量を上げて歌います。

都合よすぎるぜ


別に励まされたわけでもなんでもないのに、これがやたらと胸に響くんです。それが自分にとってプラスなのかマイナスなのかもわからないけども、とりあえず響く。響かされる。この感覚こそ、シロップならではだと思います。

ストロークスのBarely Legalみたいなオクターブリフ(同年発売、こちらは7月、シロップは10月なので多分関係はない)、そこにかぶさるドラムとベースの応酬がまた聴きどころ。シロップってやっぱり、バンド先だと思うんですよね。勿論そんな言葉ないんですが、別に鬱を吐き出したいから曲を作るんじゃなくて、まずバンドの曲書きたくて、そこに歌乗せようとしたらどうしようもなくこういう言葉が出てきちゃう、ってその順序だと勝手に確信しています。歌詞の繰り返しが多いんですが、これもボディブローみたいな効果を発揮。最後の裏声、「言ってることすらなんだったけなぁー ハァー↑」で俺は完全にノックアウト。シロップの歌詞にやられた人は安易に「良い曲だ~」なんて言えないと思います。でも、どこか救われたような、まぁ別に何も変わってないような、ハァー↑って感覚に陥ることでしょう。



Syrup16gファーストフルアルバム「COPY」(レヴュー済み)収録。


余談・自分が受験生の時、この曲聴いて不意に泣きかけた覚えがあります。音楽を聴いて感動を覚えたことは数あれど、泣きそうになったのは初めてでしたね…。受験生にPAVEMENT(どうでもよくなる)とSyrup16g(なんか虚しくなる)は禁物です。
     
プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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