The Jesus and Mary Chain / Darklands (1987) 感想 -プライベートな名盤

(2016/11/27 書き直し)

ダークランズダークランズ
(2007/05/23)
ジーザス&メリー・チェイン

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ファーストに引き続いてよく内容を表している。どこか孤立していて、おぼろげ、繊細な……。

太字(良い)>黒 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Darklands – 5:29 
02. Deep One Perfect Morning – 2:43
03. Happy When It Rains – 3:36
04. Down on Me – 2:36
05. Nine Million Rainy Days – 4:29
06. April Skies – 4:00
07. Fall – 2:28
08. Cherry Came Too – 3:06
09. On the Wall – 5:05
10. About You – 2:33

Total length : 35:51

絶望から始めよう
あのロック史に名を残した、喧噪の大ヒット作『Psychocandy』に寄せて――。彼らは疲労しきっていた。確かに作品は売れた。生活は一変した。だがそこにあったものは、彼らの性分とはまるっきり反対のものだった。不敵な笑みをもって騒ぎを煽っていたころの面影はなく、彼らは今作の前にこんな発言をイギリスの音楽誌に寄せている。

「することといえば、家の中に閉じこもって、たまに誰かに電話してはどうやって自殺しようかなどと落ち込んだ会話をするばかり。ツアーでいろんな所にいっても、彼の眼にはホテルが変わったこととTVセットの違いくらいしか映らない。」
――NME紙より


彼らは恋人と共に世間から逃げ、ひたすら時がすぎていくのをただ待っていた。そうしたどん底の中からなんとか発売にこぎ着けたのが、今作ダークランズである。


ノイズという喧噪を捨てて
まず一聴して分かるのは、前作の大部分を覆っていたあの狂気のフィードバック・ノイズが全く鳴らされていないことだ。これは明らかに意識的なもので、それはつまり、彼らが虚無的な喧噪を離れようとする意志表示だった。しかしそんなことをすれば、JAMCに残るのは、あの甘いメロディを持ったただのグッド・ギターポップだけだ。あの不敵にセンセーションを巻き起こした危険なロックバンドは、凡庸なバンドに成り下がってしまったのか?いや。『Darklands』はJAMCの全アルバムの中で唯一素直な彼らが鳴らされた一枚で、パブリックな名盤には括られずとも、少なくないリスナーにとって大事な意味を持ちえる、プライベートな名作だと思う。


このアルバムはサウンドはともかく、とにかく言葉が暗い。売れたが故に苦しむことになった彼らの心境が目に映るようだ。

「As sure as life means nothing, and all things end in nothing, and heaven I think is too close to hell.」(人生が無意味なこと、全ては無に帰すこと、それくらい確かなことだ 天国はあまりに地獄に近すぎる)
――「Darklands」より

「Tied to a door, chained to a floor, an hour glass grain of sand. Life in sack is coming back. I'm like the clock on the wall.」(ドアに縛られて 床に繋がれて 砂時計の砂――袋詰めの生活がまた始まる、壁に掛けられた時計みたいだ)
――「On The Wall」より

ひたすら全能感に包まれてアクセルを踏み込むだけだった前作と違って、今作はそんな自分たちの今を客観視したことで歌詞に深みが増している。オープニングのタイトルトラックから最後まで何度も歌われる、絶望、疲弊感。歌詞中に何度も出てくる、「誰といようがもうどうしようもない」「置物みたいに停止してしまった」自分の感情。でも、このアルバムのかけがえのなさは、一枚の構成によってその行き詰まりに救いが見いだされる所にある。



底から光を手繰り寄せるには
JAMCはオープニングトラックである表題曲にて、デヴィッド・ボウイの遺した力強い名曲「Heroes」の力を借りることで、何とか絶望の先にある一線を越えず踏みとどまった。そして内に籠っていた彼らは、自身のギターポップに何も着飾らず現状を綴りあげることで、自分たちを見つめなおしていった。そしてそれらを全てをかいくぐった先、最小限の楽器で綴られたのが、最終曲「About you」だ。

「There's something warn about the rain. There's something warm in everything. I know there's something good about you.」(雨はどこか温もりがある、どんなものにでも温もりがある そう── 君にもどこか良いところがある)
――「Abou you」より


この曲でもって彼らは、ほんの少しの肯定になんとかたどり着く。その感覚を確かめるように繰り返される、「There's something warm. About you, about you, about you...」は本当に感動的だと思う。自分はJAMCの中でこのアルバムが一番好きだ。好きというか、大切な一枚。そのまま、最初に引用したNME紙のインタビューの続きをもってこの記事を締めたい。

「――僕らはドン底にいたかもしれない。でも、星を見上げていたんだ。」


Rating : 85 / 100  ★★★★★



たしかに彼らは絶望を、地獄を見た。しかしそこで倒れずに、なんとか今作を作り上げて苦境を乗り切った。アルバムは前作に続いてゴールドディスクを獲得、キャリア最高の全英5位を記録。プレスからも概ね高評価され、ジーザスアンドメリーチェインは見事に復活を果たすのであった。

次作automaticへ続く。  

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タグ: 80s 30分台 傑作 まとまり

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サム

Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

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