Portishead / Dummy (1994) 感想


DummyDummy
(2000/05/25)
Portishead

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Radiohead経由のファンも多いPortishead、名作と名高い一作目。恐ろしいジャケだがこのジャケにしてこの音楽あり。 

(佳曲)<太字(好み)<普通 赤太字は名曲 灰色は好きでない、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Mysterons – 5:02
02. Sour Times – 4:11
03. Strangers – 3:55
04. It Could Be Sweet – 4:16
05. Wandering Star – 4:51
06. It's a Fire - 3:49
07. Numb – 3:54
08. Roads – 5:02
09. Pedestal – 3:39
10. Biscuit – 5:01
11. Glory Box – 5:06

Total Length 45:29

総評・★★★★★
サントラという概念から生まれた、唯一無二の深淵な音楽

このアルバムを最初に聞いた時は本当に驚いた。その頃洋楽聴き立てという事もあり、自分は「良い音楽というのは心が高揚するものだ」と思っていたのだ。そこに今作。高揚感一切なし。正しく当時の価値観と真逆の音楽だった。奈落の果てから鳴らしたような音。こんな音楽があっていいのかよと思ったのを覚えている。(更に驚いたのはアルバムセールス。なんでこの暗さで大ヒット、ダブルミリオンとか行ってるの…)
 
でも不思議と、本当におかしな話だが「こんなんありかよ」と思うと同時に、初めて聞いた瞬間から妙に自分の中にしっくりと収まったのを覚えている。聴いてるうちに馴染んだとかそういう話ではない。何かこう、聴いてて音楽観的な違和感はあっても、感覚的な違和感はなかったのだ。新鮮なのに懐かしかったみたいな感じ。何でだろうと思っていたが、それはどうやらこのとてつもない世界を練り上げるにあたって掲げられたテーマにあるらしい。

そのテーマとは「サウンドトラック」。詳しく書くと「スパイ映画のサントラ」を意識したらしい(「Third」ライナーノーツ参照)。それでか、と謎が解けた。意識して聴くような一般的なポピュラー音楽としてふれたから、違和感があったんだ。逆に、意識せずとも頭の中には漠然としたイメージとして溜めこまれていくような音楽が元だから、感覚的には違和感がなかったのか、と。

実際、今作のサウンドの暗さは「作曲者の憎悪や疎外感がにじみ出た初期衝動的な音楽…という感じではない。映画のサントラと一緒で、雰囲気はともかくアルバムの音楽自体は世界観を表現するために高度に計算、コントロールされたものであって、自己主張的な音楽表現とは対極のもののように感じる。その徹底された音の世界観が、この作品の魅力の一つだろう。

しかしそこを刺し引いても、今作はどう考えても巨大な陰鬱さを底に秘めている。この要素は一体どこから来ているのか。そこでやってくるのが真正ダウナーのボーカリスト「ベス」である。曲によって様々な表情を見せる彼女の歌唱が作品の完成度を劇的に高めているのだが、どんな曲でも彼女の声は儚げというか、とにかく明るさや快活さみたいな要素が微塵も感じられない。微かな光を感じる曲でもドン底から歌われる曲でも、とにかく根底に諦観した暗さがあるのだ。逆にその中で、ここまでサントラ的に多種多様で繊細な世界を持つ楽曲たちを自分のものとして歌える、その歌唱力は絶品だ。

とにもかくにも今作の佇まいは恐ろしく魅力的なものである(主要音楽誌でも非常に高い評価を得ている)。万人受けする音楽では間違いなくないが、サントラに加え、ヒップホップ感覚で取り入れられたジャズなどの音楽の美味しいトコ取りしたような独特の雰囲気は多くの少数派を虜にするはず。確固たる世界観をもった音楽が好きな人は必聴。

宣伝用の動画はこちら
tr11. http://www.youtube.com/watch?v=yF-GvT8Clnk
何この再生数(引き)。それはともかく自分も大好きな曲で、初めて聞いたとき一発でもっていかれた。これはショートバージョンだけど、曲構成は大体正しい。ちなみにサンプリングの原曲はこれみたい。
tr2. http://www.youtube.com/watch?v=g7gutsi1uT4
屈指の鬱曲。音の震え方ですらもう圧倒的に暗い。しかし全英13位。イギリス怖い。

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タグ: 90s 40分台 名盤 デビュー・アルバム

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サム

Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

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