PAVEMENT 全フルアルバム感想

ディスコグラフィ
ファーストアルバムに至るまでは、マルクマスとスコットを中心にギャリーヤング御大プロデュースのもと、Slay Tracks (1933–1969)、Demolition Plot J-7、Perfect Sound ForeverなどのEPがリリースされている。


スランティッド・アンド・エンチャンティッドスランティッド・アンド・エンチャンティッド
(2010/02/24)
ペイヴメント

インディー感全開の名ジャケ!
1st。総評・★★★★☆ Length 44:45
92年作。ドンピシャでグランジブームのまっただ中、さりげなく放たれた記念すべきファーストアルバム。同時に、大問題作である。そのあまりにオンボロでスカスカなサウンドは、「地球最後のデモテープ」「史上最悪のライブ」など数々の迷言を評論家にもたらした。実際、同時期の作品、ニルヴァーナのNevermindやパール・ジャムのTenあたりと比較すると、その異端児っぷりはもー笑えるくらいに際立っている。しかしそんな珍妙なこの作品、何とも言えず代え難い魅力があるのだ。その評価の高さは、ローリングストーンズ誌のオールタイムベスト500に、90年台以降の作品としては(19位Nevermind (Nirvana)、110位the Bends(Radiohead)に続く)第3位、134位でランクインしていること。他数々のランキングの上位にいることから窺える。シリアスだけが時代の写し鏡じゃない。何となく作ってたら何故か90年台の空気を全身に纏っていたという、奇跡の名盤。しかし純粋なロック少年が「名盤なのか」と意気込んで聴くと、「俺の知ってる名盤と違う」になるのは必死。やはり入門はセカンドからがオススメだ。

バンドの歴史の中でも最もインディーロックしているのが本作で、マルクマスは「再現不能なエネルギーがあって、制作の際の自意識もなくて…これは自分たちのベストレコードだと思う」(2010)と述べている。(Wikiの記事リンク参照)納得しきりの発言である。衝動だけで何も音楽として完成されていない。だからこそ再現できず、無二。まさにインディー感の塊のような作品だ。売上は15万枚で、ペイヴメントとして二番目によく売れたそう。
今作からセカンド制作までにドラマーおじさんギャリーが脱退し(金銭上の問題とされている)、編集盤「No Alternative」に参加した。
視聴はこちらから。
オススメ曲→Summer Babe (Winter Version)、In the Mouth a Desert、Zurich Is Stained、Here 他


クルーキッド・レイン・クルーキッド・レインクルーキッド・レイン・クルーキッド・レイン
(2010/02/24)
ペイヴメント

これまた奇天烈な名ジャケ!
2nd。総評・★★★★★ Length 42:18
94年作。想定外だったであろう前作の極度の高評価を受け、早速「もうやめたい」なんて愚痴りだしたペイヴメントが、両手いっぱいのアイロニーとキャッチーポップなメロディ全開で作り上げた名作。最終曲の一節、「おやすみ、ロックンロールの時代」を筆頭に、「スマッシングパンプキンズとツアーに出る、あいつらちっとも機能してないぜ」などなどもうありったけのシニカルが歌詞と演奏にこめられている。それでいて楽曲は最高にポップなんだから堪らないのだ。音もまだまだローファイだが、一気に聴きやすさを増した。キラーチューン「Cut your hair」のモダンロックチャートトップ10入りを皮切りに、売上も前作から大きく伸ばして24万と、最大のヒット作となった。一番の人気作であり、「ヘタヘタポップなペイヴメント」の到達点は間違いなくココである。オールタイムベスト500でも210位にランクイン、ピッチフォークの90年台ベストソングにGold Soundzが200曲中1位で選ばれるなど非常にその評価は高い。

「マルクマスの歌詞は皮肉屋なものが多い」と言われるが、そうした側面が特別際立ってるのは今作だけじゃないだろうか。ひょっとしたら制作上のプレッシャーの中、マルクマスが平静を保とうとした結果がこの歌詞なのかもしれない。それを隠すため、ブリットポップ時の英国ばりの多少歪なポップさに仕上げた…のかも。(ちなみに当の本人は今作について、「何でこんなポップかって、単に周囲の期待にこたえる必要があったからだよ」「他バンドの実名を入れたのは、メディアがどういう反応を示すのか見てみたかったんだ」と身も蓋もなく性質の悪い返答をしている)。

とにもかくにも、評論家が言うような「アンチロックンロール、ローファイなペイヴメント」は今作で終わりを迎えた次作からの彼らは、批評性でなく音楽性を突き詰めていくことになる。
ちなみにこのタイミングで大規模音楽フェス「ロラパルーザ」に呼ばれたものの、スマパンのビリーと関係を悪化させたことで有耶無耶になった模様(なんてアホな…)。マルクマスらが出張する他バンドSilver Jewsの活動が始まったのもこの辺り。時代はグランジの終わりである。
視聴はこちらから
オススメ曲→Silence Kit、Elevate Me Later、Cut Your Hair、Range Life 他全曲


ワーウィ・ゾーウィワーウィ・ゾーウィ
(2010/02/24)
ペイヴメント

今までと一転してこのクソジャケ!
3rd。総評・★★★★★ Length 55:51
95年作。収録曲数は最多の18だが、(編集盤を除くと)前作から一年弱というキャリア最短でのリリースとなった。デビュー作によって生まれた予想外の期待に、見事すぎる模範解答(セカンド)を返したペイヴメント。今作は前作と比較して、圧倒的に「ポップさ」が削ぎ落とされた一枚となっている。マルクマス曰く「今作は単にイカすインディー・レコードであるべきだって思ったんだ」(ライナーノーツ参照)。その言葉通り、内容としてはデビューアルバムの延長線上にある作品である。

しかし1stと比べると、とにかく様々な部分で著しい進化が聴き取れる。音は既にローファイを脱しているし、雰囲気こそド下手ジャンクロックだが、そのバンドアレンジの研ぎ澄まされ方は尋常ではない。何より凄いのは、18曲全てがちゃんと聞き分けられること。蔑称として使うわけではないが、俗に「ローファイ」と括られるバンドのどれほどがそんなことが出来るだろう。彼(ら)のセンスと実力が垣間見えるところだ。実際コレが最高傑作とするファンも少なくなく、個人的にも「バンドとしてのペイヴメント」の到達点は今作だと思う。(1stからの)進化によって失われたものも確かにあるが、秀曲怪曲何でもござれな雑多感は、インディー志向のロックファンなら割と全員必聴レベルである(多分)。

ただ難点は「コレ!」というリードシングル的楽曲がないことであり、それ故地味な所である。通好みというか、ある意味渋い。それもあってか売上はブレイクした前作から一気に半減、12万に留まってしまった。確かに納得だが、これだけ聴かないというのはかなり勿体無いので強く勧めたい一作
95年は先の因縁を越えてロラパルーザにも出演した…が、ひどいパフォーマンスを披露した結果相当こっぴどい反応を貰ったそうな苦笑。
視聴はこちらから
オススメ曲→Rattled by the Rush、Father to a Sister of Thought、AT & T 他多数


ブライトゥン・ザ・コーナーズブライトゥン・ザ・コーナーズ
(2010/02/24)
ペイヴメント

ゴチャゴチャしてらしいジャケ!
4th。総評・★★★★ Length 46:10
97年作。前作でバンドとしてのスタイルを完全に確立したペイヴメント。今作では路線は大きく変えず、よりまっとうなロックに進んだ作品となった。「円熟」と表されることも多いアルバムで、前三作では(恐らく意識して)「ペイヴメントらしい壊れた音感覚」が「過剰」に撒かれていたが、今作はそうした部分が抑えられており、より洗練された演奏が聴ける。

マルクマスが「心から直接問いかけるような曲を書きたいと思う」と語ったとおり、アルバムは気持ちのよいメロディが沢山詰まっている。その聞きやすさは、サードを経ての、クルーキッドレイン第二弾と言える代物。とはいえその無二の個性は健在で、普通のロックに接近しつつも、自分たちの個性を最大限活かした独自のバンドサウンドはやはり最高だ。特に最終曲Fin後半でのギタープレイは古今東西唯一無二といっていい出来栄えで、マルクマスのベストプレイの一つだろう。「ヘタウマポップなペイヴメント」の到達点が多分コレである。

ライナーノーツにもある通り、「斬新に見える方法論も、ギミックに拠ったイメージの刷新もここには無い」。しかしそれでいて十二分に素晴らしいのがこのアルバムだ。目新しさは無くとも、インディーロックバンドとしては最高の正常進化。しかしペイヴメントはこの二作である種何かを極めてしまい、音楽的に行き詰まってしまうのだった。売上は14万で、ファーストと並んでだいたい二番目のヒット作に。USチャートでは今作が最高位を記録している。
視聴はこちらから。
オススメ曲→.Stereo、Shady Lane 、Embassy Row、Fin 他多数


テラー・トワイライトテラー・トワイライト
(2010/02/24)
ペイヴメント

らしい様な、らしくない様なジャケ
5th。総評・★★★★★ Length 44:08
99年作。ラストアルバム。今作をもって、創造性でのバンドの限界、アメリカ全土に散らばっているメンバーを集めてバンドをやる難しさといった理由からペイヴメントは解散に至った。約10年間。長いようで短かった、バンドのキャリアを統括する…ような作品にはなっていない。とにかく語ると長くなってしまうので、このアルバムについては個別記事にて。彼らは最後までブレず、同じ道を繰り返さず、前進し続けて解散した。そんな理想的なロックバンドが創った、素晴らしいラストアルバムである。   
視聴は個別記事からどうぞ。



WestingWesting
(1993/03/30)
Pavement

This is pavement
編集盤。総評・??? Length 48:23
最後にオチとして初期ミニアルバムの編集盤を紹介。このまま記事を終えてしまうと、まるでペイヴメントが「最後までインディー精神を保って名作を生み続けた気高き理想のロックバンド」みたいになってしまいそうなので、ここで評価を落としておく(オイ)

断言するがこのアルバムはクソアルバムである。ペイヴメントがローファイの代表格として扱われるのは、ファーストとセカンドの存在感・そしてこの編集盤の3つがその理由である。「音楽的洗練感」皆無のその23曲はまさにジャンク。酷い演奏しかない…が、それが一部の人には最高だったりするのだ。そしてかくいう自分もそんな一部なのだった…。説明不能、クールと無縁。路傍の石か原石か。ロック界の珍獣と言われた理由がここに在る。(キメ顔で)
視聴はこちらから
一応いっておくと2曲目「Box elder」など地味な名曲も隠れている。ファンは必携!


ということでペイヴメントの全アルバム感想でした。

オマケ(マルクマスのソロ作)
Stephen Malkmus & the Jicks / Wig Out at Jagbags (2014) 感想


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Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

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