Beck / Morning phase (2014) 感想


モーニング・フェイズモーニング・フェイズ
(2014/02/26)
ベック

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ドヤ顔とか言わないの。タイトル通りの色彩感が好きですね。国内盤はケース付き。

(佳曲)<太字(好み)<普通 赤太字は名曲 、斜体はシングル曲、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Cycle 0:40
02. Morning 5:19
03. Heart Is a Drum 4:31
04. Say Goodbye 3:29
05. Blue Moon 4:02
06. Unforgiven 4:34
07. Wave 3:40
08. Don't Let It Go 3:09
09. Blackbird Chain 4:26
10. Phase 1:03
11. Turn Away 3:05
12. Country Down 4:00
13. Waking Light 5:02

Total length : 47:00

総評・★★★★☆
様々な意味を汲み取る「朝」を鳴らし映した復活作
90年台・00年台と存在感を放ち続けてきたベック。デビューからもう20年、通算8作目、10年台初のリリース作品が今作、MORNING PHASE(朝方)である。フィジカルリリースは6年ぶりだが、その間ベックが何をしていたのかはこの記事に詳しい。
[FEATURE] Six Years Of Beck:『Morning Phase』までのベックの6年間 | Monchicon!
「2008年頃に脊椎をひどく傷めてしまい、しばらくの間満足な音楽活動ができなかった」「自身の音楽に対する姿勢をじっくりと見つめ直す機会が生まれた」「西海岸の老舗レーベルcapitolに移籍、カリフォルニア・ミュージックの伝統に触発された」あたりが作品背景的にトピックかな。

まずは簡単に自分のベック観を。好きなアルバムは、上から順に…ミューテイションズ、オディレイ、シーチェンジ。つまりベックの作品を乱暴にヒップホップ寄り(mellow gold, information)、ポップ寄り(odelay, guero)、と分けていくなら、割とアコースティック寄りなベックが好きな人である。そして今作は正しく、もう純度100%でそのタイプのベック作品だ。
 
名作SEA CHANGEと今作の違いは?
ベック自身はそうした視点を嫌がっているそうだが、どう聴いたって初聴きの印象はシーチェンジの続編である(実際メンバーも当時の面子だ)。しかし、やはり聴きこむと両者には違いがある。どうしても印象がかぶると思うので、まずそこを見てみよう。

シーチェンジの魅力の一つに、荘厳ながらもちゃんとロック的なダイナミクスがある所が挙げられる。エレキギターは随所で鳴るし、Round the Bendの重厚感やSunday sunの唸るドラムなど、きちんと曲に凸凹がある。そこがあの作品の魅力で、聴きやすさでもあった。対して今作モーニングフェーズには、そうしたダイナミクスはほとんどない。その点で好みに合わない人も居るだろう。エレキギターの差し込みすら無く、その分コーラスワークと端正なピアノが曲を彩っているものの、分かりやすいフックがないので印象は非常に地味である。

その代わり、今作は音の響きが本当に良い。その音は各人に「アンビエント」「スピリチュアル」といった形容で表現されているが、本当にそれくらい空気に溶け込むような素晴らしい音に浸れる。そこが今作の大きな魅力だ。ロッキンオンのインタビューでは「伝統に沿いつつも、モダンな音として作品を完成させるのに苦労した」と語っていたが、まさしく、この単なるリバーブに留まらない音の広がりは2014年のサウンドである。

シーチェンジの音はどこか硬質で研ぎ澄まされた印象を受けた。しかしモーニングフェイズの音は、研鑽されつつもどこか温もりがある。その違い、制作背景がそれぞれ「恋人との別れ」「復帰作」というのが影響していると見るのは、そこまで的外れではないはずだ。

キャッチーな作品ではないが
はじめの方にも書いたが、今作のベックはポップサイドに居ない。そうした路線を求める人には肩透かしだろう(そちらの方は、去年発表のクールすぎるポップチューン三曲を収録するであろう次作に期待しよう)。個人的にも、ベックはポップなメロディメーカーであっても、決して(少なくとも日本人好みな)美メロメーカーではないと思っている。今作も、もちろん良いメロディは並んでいるが、そこだけに魅力を見出すのは難しいかもしれない。そうした分かりやすい凸凹でなく、声含めた全体の音、面や空間で味わうのが一番かと。

マストではない…だからこそ素晴らしい作品
大物の新作だが、正直一年を代表するような、大仰でマストな作品ではないと思う。しかしだからこそ、かけがえのない音楽が鳴っているように感じた。間違いなく力作なんだけど、聞き応えは軽やかで、なおかつ沁み渡って…すごく良い作品だと思う、本当に。彼が歩んできた歳月、苦難、そしてそこからの新たなる一歩を感じる。

Waking Lightに照らされたベックのこれからにまた期待
「Cycle」で始まり、「長い夜の嵐を超えて目覚めた朝」から「目覚めの光が貴方を照らす」までに敷き詰められた13曲、内向的な歌詞に対してのこの音の多幸感。最終曲Waking Lightの後半、絶妙すぎる展開で重なり広がっていく音の味わい深さは、間違いなくキャリア屈指の出来栄えである。このアウトロは「またここから何かが始まっていく、そんな予感」、つまり「目覚めの光」だ。再び目覚めたベック。次はどんな作品を届けてくれるのだろう?


視聴用の動画はこちら

Say Goodbye (LIVE)→Waking Light
     

タグ: 14年 40分台 傑作

コメント

No title

サム様
こんばんは

ここまで続ければ 「ベックとは俺のことだぜ」と胸を張って言えますね。

カントリー、ウエストコースト、サイケ・・・
相変わらず色々混ざっていますが、
きちんとまとまっていますね。

Re: No title

GAOHEWGII さん こんにちわ。

ベックの音楽センスは、やはりそうした多くの要素の編集能力にあると思いますね。
既に20年間第一線で活躍してますが、これからも精力的に活動して欲しい限り。

> サム様
> こんばんは
>
> ここまで続ければ 「ベックとは俺のことだぜ」と胸を張って言えますね。
>
> カントリー、ウエストコースト、サイケ・・・
> 相変わらず色々混ざっていますが、
> きちんとまとまっていますね。

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サム

Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

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