特集記事・Tortoiseについて オススメ曲と全アルバム感想 

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トータスは、主に90年代にポストロックの筆頭格として活躍した、シカゴのインストバンド。 前衛的であると同時に難解には寄りきらない、その独自の立ち位置・音楽性は幅広い音楽シーンに確かな影響を与えた。「シカゴ音響派」の代表的存在でもあり、彼らには様々な文脈や派生がある。そんなサイドシーンを掘っていくのもまた一興である。

メンバー
ジョン・マッケンタイア  (ドラムス、パーカッション、キーボード)
ダグラス・マッカム (ベース)
ジョン・ヘーンドン (ドラムス、パーカッション)
ダン・ビットニー (パーカッション)
ジェフ・パーカー (ギター)

過去のメンバー
バンディ・K・ブラウン (ギター) 1stに参加
デヴィッド・パホ (ギター) 元Slint 2ndに参加

オススメ曲

TNT - 3rd「TNT」表題曲
素朴なリードメロディを軸に、アンビエント、ジャズといった要素までが無国籍に混ざり合い、広がってゆくそのサウンドスケープ。ポストロックを代表する一曲といっても過言ではない。
Glass Museum - 2nd「Millions Now living will never die」収録
荘厳なメロディと緩急ある展開で魅せる人気曲。「ポストロック」というと今では「轟音展開」の印象の方が強いかもしれないが、こうした冷めた(研ぎ澄まされた)音感覚こそがその源流と思う。
Seneca - 4th「Standards」収録
生演奏の可能性に立ち返った時期の代表曲。フリーセッションのような始まりから、一転ソリッドすぎる演奏を聴かせる怪曲。ここではライブ版を。

初めて聞くなら
初めてトータスを聴く際は、国外に名を馳せた「Millions Now living will never die」か、「ポストロック」を知らしめた「TNT」から入るのが常道だと思う。メロディ感覚を重視する方であれば前者を、アンビエント系も好きという方は後者を選ぶと良いだろう。「ポストロック」という言葉自体に興味を持って入るなら、まず2ndと3rdを(音響派やSlintの系譜として辿るなら1stも)押さえ、そこからトータス自体に興味を持てば他のアルバムを…という風に聴くと魅力が伝わりやすいかと思う。

とはいえ音楽は自分が気になったアルバム・曲から攻めるのが一番です。トータスのライナーノーツは非常に参考になるので、購入の際は全面的に国内盤を推奨します。下には個人的な全アルバムの簡単な解説と感想を載せたので、そちらも参考にしてもらえれば幸いです。

全アルバム感想

トータストータス
(2001/11/07)
トータス

ダンボール系厚紙の紙ジャケ仕様です

01. Magnet Pulls Through – 4:37

02. Night Air – 3:50

03. Ry Cooder – 7:04

04. Onions Wrapped in Rubber – 6:40

05. Tin Cans & Twine – 4:20

06. Spiderwebbed – 8:33


07. His Second Story Island – 2:41

08. On Noble – 4:05

09. Flyrod – 3:29

10. Cornpone Brunch – 4:44

 

11. Mosquito - 3:54 (Bonus Track)

1st。94年作。 総評・★★★★☆ Length 50:03
「固定化されたジャンルやスタイルを超えた、新しいミュージックを創ろう」と熟練プレイヤーたちが集まって出来たトータス。記念すべきその一作目は、あえてベースギターをリードメロディにすえ、こだわりのドラム音響をこらして練られた渋いアンダーグラウンドミュージックとなった。作品として、革新的!と叫ぶほどのインパクトはないかもしれないが、ミニマルで、アブストラクトでサントラ的な、その荒廃とした世界観は何とも言えず魅力的である。意味不明な供述なのでもう少し書くなら、「灰色のスローコア」だろうか。ダメだこれ。
個人的に今作の雰囲気は、偉大なる先人「スリント」の影響が大きい様に感じる。Slintにあった激情的な要素を廃し、ラウドギターにしてもひたすら無機質に鳴らした(そしてかつ聴きやすさを保ちえた)所に、トータスのこれからが見える気がする。とにかく、「亀」の冒険はここから始まったのだ。
視聴・Night Air → http://youtu.be/IQM_s0lwjxQ


ミリオンズ・ナウ・リヴィング・ウィル・ネヴァ-・ダイミリオンズ・ナウ・リヴィング・ウィル・ネヴァ-・ダイ
(1996/07/08)
トータス

この画像では分かりづらいが最高のジャケ

01. Djed  20:57

02. Glass Museum  5:27

03. A Survey  2:52

04. The Taut and Tame  5:01

05. Dear Grandma and Grandpa  2:49

06. Along the Banks of Rivers  5:50

Bonus Tracks

07. Gamera 11:55

08. Goriri  6:39

09. Restless Waters  3:41

10. A Grape Dope  4:12

2nd。96年作。 総評・★★★★★ Length 42:56 (輸入盤) 68:42 (国内盤)
初聴きにオススメ。名作、最高傑作と謳われる代表作。今作の世界各国での高評価が、一連のポストロック旋風を巻き起こす契機になったととされる。作風は前作から一気に変化。ファーストのベース志向を離れ、ギター・鉄琴などがメインに据えられてメロディアスになった。一般的にも「トータスらしい」と言われるサウンドは今作以降を指す。最大の収穫である一曲目の「Djed(ジェド)」は20分の大曲で、曲自体が自然進化的に変化していく不思議な様をスタジオ録音することに成功した、唯一無二の味わいを持つ名曲。この作曲とも即興とも言えない、まさしく「構築」のようなサウンドプロダクションが次作で開花することになる。
購入の際は国内盤を推薦する。クラウトロックの影響著しい名曲Gameraなど、良曲揃い踏みの内容となっているからだ。5曲25分という、まるでEPのような素晴らしいボーナストラックである。

ちなみに今作のリードメロディ作曲者は、新加入(TNTレコーディング後離脱)したデイヴィット・パホ。そのメロディセンスは、彼のソロ活動やパパMなどの作品でも味わうことが可能だ。興味を持った方には、関連作として「LIVE FROM A SHARK CAGE」(スタジオアルバム)という素晴らしい一作をオススメしたい。
視聴・Glass Museum → http://youtu.be/yomowCF5icY


TNTTNT
(1998/03/04)
トータス

この画像からも分かるように最悪のジャケ

01. TNT – 7:33

02. Swung from the Gutters – 5:52

03. Ten-Day Interval – 4:44

04. I Set My Face to the Hillside – 6:08

05. The Equator – 3:42

06. A Simple Way to Go Faster Than Light That Does Not Work – 3:33

07. The Suspension Bridge at Iguazu Falls – 5:38

08. Four-Day Interval – 4:45

09. In Sarah, Mencken, Christ, and Beethoven There Were Women and Men – 7:29

10. Almost Always Is Nearly Enough – 2:42

11. Jetty – 8:21

12. Everglade – 4:21


   Bonus Track 
     13. TNT (Nobukazu Takemura Remix)
3rd。98年作。 総評・★★★★☆ Length 64:48
圧倒的なジャケのインパクトと共に最も高い知名度を誇る代表作。プロツールズ(デジタル的な編集)を全編に導入し、曲やメロディの欠片たちがその場でリミックスされて練られ完成したような楽曲陣は、当時の音楽シーンに大きなインパクトを与えた。今作は「ポストロック」に一つのピークを作るとともに、当時「ダウンテンポ」や「ブレイクビーツ」といった潮流があったクラブシーンにまで影響を及ぼした。また、その繊細すぎる音のつくりは「ポストプロダクション」(録音後の諸々編集作業)と言う言葉の普及にも一役かったように思う。語るべきことが多いという点で、間違いなく名作だ。

内容も凄まじい。ロックもポップもアンビエントもサントラもジャズもドラムンベースもエレクトロニカも、その全てが自然に混ざり合い、最終的に「ミュージック」としてまとめられた曲たちはジャンル的な形容不能。音楽というひたすら自由な地平から鳴らされた無二のサウンドスケープは、間違いなく彼らの到達点と思う。その神髄は一曲目TNTとJettyにあり…といった感じの詳しくは、別に特集記事を更新しているのでぜひどうぞ。
Tortioise / TNTを聴く① ポストロックの魅力・その代表作を改めて考える
Tortioise / TNTを聴く② 「Jetty」~Isotope217、Chicago Underground、"ポスト"ってなんだ
正直アルバム全体を見ると影の薄い曲も結構あり、真顔で「名作」と呼ぶには多少躊躇いもあるのだが、その革新性も含めて聴いておくべき作品なのは間違いない。
視聴・TNT → http://youtu.be/QbGHpO39wK4
 

スタンダーズスタンダーズ
(2006/01/20)
トータス

意味深なジャケ。「意味などない」と亀は言う。

01. Seneca – 6:20

02. Eros – 4:26

03. Benway – 4:46

04. Firefly – 3:56

05. Six Pack – 3:11

06. Eden 2 – 2:08

07. Monica – 6:30

08. Blackjack – 4:07

09. Eden 1 – 2:36

10. Speakeasy – 6:18

Bonus Tracks

11. Blackbird – 5:04

12. Blue Station – 5:37

4th。01年作。 総評・★★★★ Length 44:18
前作でデジタル的な編集作業やポストプロダクションはやり尽くしたということで、今作ではアナログへの回帰が意識され作られた。かなり攻撃的な内容になっており、とにかくゴツゴツした曲が並ぶ。ライブ出演が増える中でうまれたアグレシヴなサウンドは、、TNTの心地よく落ち着いたものとは正反対の内容だ。「二部構成」みたいな展開の曲が多い上、短めのトラックも多いので、聞き流してるとどこまでがどの曲名なのか非常に覚えにくいアルバムでもある。評論家からは「これまでと比較すると多少インパクトが…」と捉えられ、確かに楽曲に閃きはあるが踏み込みきれなかった感もある若干不完全燃焼な作品と、個人的には思う。ここからシーンにおけるトータスの存在感(あるいはポストロックという概念)は下降線に入ってしまう。
とはいえ前作への反動か、あえて不完全性に踏み込んで、直感的なアイデアを詰め込んだ今作の作風は面白い。目指す方向は良かったのだと思う。前作の創作過程をモンタージュ(視点の違う複数カットを組み合わせる)と捉えるなら、さしずめ今作はコラージュ(全くバラバラな素材を繋ぎ合わせる)。内容の評価は人によって結構変わるんじゃないかな。
視聴・Seneca → http://youtu.be/0muak01p6k8



It’s All Around YouIt’s All Around You
(2004/03/03)
TORTOISE

さぁーてこのジャケは。

01. It's All Around You – 4:09

02. The Lithium Stiffs – 3:59

03. Crest – 4:21

04. Stretch (You Are All Right) – 5:14

05. Unknown – 5:38

06. Dot/Eyes – 3:46

07. On the Chin – 5:21

08. By Dawn – 1:51

09. Five Too Many – 4:33

10. Salt the Skies – 4:45


Bonus Tracks
11. Elmerson, Lincoln, & Palmieri
12. Deltitnu
5th。04年作。 総評・★★★☆ Length 43:52
余談だがジャケットについては「安っぽい」と「綺麗」で評価が真っ二つに別れる。個人的には前者に賛同。内容だが、今作は過去4作にあった音楽的な変化はほとんどなく、自己の音楽、これまでの総決算となっているのが最大の特徴。そう捉えてからタイトル「It's all around you」を考えると、中々唸るものがある…かも。丁寧に整えられ、薄いモヤに包まれたような質感の楽曲が並ぶが、それを「良い」ととるか「退屈」ととるかもまた評価が別れるところか。個人的には若干後者。
当時はもうポストロックが死語になってたこともあり、バンドとしてもここで存在感が薄くなった感は否めない(ただ、同時期はフェスなどでの出演は多かった)。しかし収録楽曲は生演奏映えするものも多く、グッドミュージック・グッドアルバムなのは間違いない。実際、海外Amazonでの評価はTNTに次いで二位のようだ。前作同様評価は人によって変わってくるのかなぁ。トータスの音楽自体が良い意味でぼやけているので、人によるそういう見方の違いも面白い。
視聴・It's all around you → http://youtu.be/Zfb58eB5oAA



Beacons of AncestorshipBeacons of Ancestorship
(2009/06/22)
Tortoise

幾何学的で好きなジャケ

01. High Class Slim Came Floatin' In – 8:14

02. Prepare Your Coffin – 3:37

03. Northern Something – 2:24

04. Gigantes – 6:21

05. Penumbra – 1:08

06. Yinxianghechengqi – 3:37

07. The Fall of Seven Diamonds Plus One – 3:40

08. Minors – 4:23

09. Monument Six One Thousand – 3:22

10. de Chelly – 1:46

11. Charteroak Foundation – 5:07

6th。09年作。 総評・★★★★ Length 43:39
前作に続いてさらに注目度が下がり、残念ながら評判もそんなに良くなかった気がする目下最新作。インターバルは前作からは5年と最長だった(14年現在この最長記録を更新中だ)が、課外活動が忙しかっただけでなく、作曲過程が難産だったようだ。内容としてはスタンダーズに近く、感覚的で発作的な閃き重視の攻撃的な楽曲が並んでいる。オールB面クオリティ」なんて超ムゴイ形容をつけられたりもするが、完全に開き直ったようなインストパンクナンバー(!)などなど、アイデア一発勝負な曲作りは聞いてて面白いはず(押し)。ベースの音が図太かったり、ヒップホップやダブステップに影響された強烈なビート感覚、ロックテイスト溢れる曲たちなど、楽曲が新鮮な輝きを放っている。久々に一曲ごとのキャラもちゃんと立っていると思う(名前も覚えやすい)。スルーしてたなら聴いてみて損はない…であろう佳作だと僕は思うのです。はっちゃけたトータス、どですか。
視聴・Charteroak Foundation → http://youtu.be/VFhy8MYg4uU
Gigantesが一番良いと思うのだが、動画がなかったので個人的にトータス新境地を感じたこの曲を。ギターのアルペジオワークが主題だが、途中聴いたことのないようなテンションコードを奏でだし、そこにバンドが追従する展開が熱い。

ライナーノーツには「トータスは最近になってようやくアイデンティティを見つけたんだ笑」「今はまだトータスがスタートしたばかりのような状態さ」と希望に満ちた発言が見えるが、ここから新作への音沙汰はない。皆忙しいのもあるだろう。しかし、時折「トータス・新作へのレコーディング作業中」みたいなニュースは見かける。そうだ、多分今もどっかで音楽やっているのだ。ファンは彼らの帰還を気長に待とう。


そんなトータス、全く持ってよくわからんタイミングですが来日です。行ってきます。

↓行ってきました
2014/05/08 Tortoise Live @Billboard Tokyo ライブ感想


画像出典・http://msp.c.yimg.jp/image?q=tbn:ANd9GcSn2Q5Q7FXhurpAVKZpOcCDD2TdJ-SbOjAKuD6UFW6RgWs3P8xHXOmLdgMq:http://3.bp.blogspot.com/-qsTVGJn7Euw/TvAYNssN57I/AAAAAAAAAkg/NzD46RZ6e98/s1600/tortoise_live.jpg
     

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コメント

No title

サム様 こんばんは

特に
葛藤が伺える後半のレビューがおもしろかったです。

トータスな有名なTNTだけでわかった気になっていたので
これを気にもう少し聴いてみます。

どうやら繊細な人たちみたいなので
今回のライヴでファンから励まされて
今後のアルバム作りを気持ち良くやってもらえるといいですね。

Re: No title

こんばんわ、旅行帰りで返信が遅くなってしまいました。
後半はちょっと葛藤があったかもしれませんね、結構好き嫌い分かれる作品なので…笑
この記事を見て「もう一枚くらい聞いてみるか」という気になったり、参考になれば幸いです。

今回の来日はニューアルバムへの試運転だと信じてます笑。今回も評判良かったので、このまま気持ちよく制作してほしいです。

> サム様 こんばんは
>
> 特に
> 葛藤が伺える後半のレビューがおもしろかったです。
>
> トータスな有名なTNTだけでわかった気になっていたので
> これを気にもう少し聴いてみます。
>
> どうやら繊細な人たちみたいなので
> 今回のライヴでファンから励まされて
> 今後のアルバム作りを気持ち良くやってもらえるといいですね。

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プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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