スピッツ 全フルアルバム感想 -後期(現在)-

スピッツの全フルアルバムを、(独断で)初期・中期・後期と分けて振り返ります。
中期②についてはこちらからどうぞ。
曲の色付けは赤太字(名曲)赤字(大好きな曲)太字(良曲)みたいな感じで、下線曲が作品の個人的ベストトラックです。
SPITZ_2010-min.jpg2007


後期(現在)
後期(現在)は「スーベニア」「さざなみCD」「とげまる」「小さな生き物」の4作(以下キャリアの続く限り……)です。個人的に、これ以前のスピッツの曲には「懐かしさ」を、ここからのスピッツには「今」「00年代J-POP」的な響きを感じます。それは勿論自分の年齢的な刷り込みもありますが、アレンジ面でも時代を意識した(カウンター含む)音作りが目立っている。一方、前作までで高められてきたそのバンドサウンドは既に「完成」といっていい成熟っぷりを見せており、その分後期作品に面白みや刺激は少ない。「ここらへんで離れてしまった」という人も多いかもしれません。しかしそうした盤石の態勢から良曲を生み出し続けていく様はひたすら頼もしく、彼らが活動するに十分な魅力を放っています。キーワードは「日常に寄り添うようなグッドポップス」。聴いてると少し日常が楽しくなるような。それが正しく今もスピッツが活動を続けている理由だと、自分は思っています。詳しくは「小さな生き物」 にて。

  

スーベニアスーベニア
(2005/01/12)
スピッツ

ジャケ最高
01. 春の歌 (4:41) 06. 正夢 (5:12) 11. テイタム・オニール (3:35)
02. ありふれた人生 (4:59) 07. ほのほ (4:18) 12. 会いに行くよ (4:18)
03. 甘ったれクリーチャー (5:14) 08. ワタリ (4:00) 13. みそか (4:37)
04. 優しくなりたいな (3:52) 09. 恋のはじまり (4:57)  
05. ナンプラー日和 (3:36) 10. 自転車 (3:00) 収録時間 56分42秒
05年作。11th。総評・★★★☆
このバンドで存在するために

作品については、前回も参照したインタビュー記事がやはり一番参考になりそうです。前作である種の完成を見せたスピッツサウンド。タイミング的には「解散」という言葉もチラついたんじゃないかと思うんですが、バンドは「続けていく」ことを選んだ。その中で草野さんは初心に帰った思いを抱き、「目の前の人にも届く直球の言葉」を目指しました。


そして音楽的には、挑戦作と言っていい内容だと思います。「続ける」ことを選ぶ以上、バンドは「今」にアップグレードする必要があったのです。それは洋楽でなく邦楽シーンへの目線、簡単に言うと「(主にストリングスによる)やたら壮大な名曲風アレンジ」で、そこに携わったのが亀田さんですね。今作では「ありふれた人生」「正夢」「会いに行くよ」あたりがまさにソレで、ここまで外部の音を派手に付け足すのは異色作『オーロラになれなかった人のために』以来、時代を俯瞰しての挑戦だったんだと思います。どれも非常に美しい名曲です。他にもピアノ語り(4)、沖縄調(5)、レゲェ(10)、オルガンメイン(11)など新曲調がズラリ。それは00年代J-POPを引っ張った亀田誠治さんの味付けであり、自身のロックサウンドを極めたスピッツに新鮮な風を送り込む試みだったのでしょう。ここからポップスにスピッツが回帰していきます

曲では、ベテランとは思えない瑞々しすぎる「春の歌」、疾走感が気持ちいい「ワタリ」、弾き語りでも絶品そうな「会いに行くよ」、アラフォーの全力疾走「みそか」が好き。しかし音が過剰装飾に聴こえる曲が多い(音圧が分厚すぎる)・曲密度が濃すぎて聴き疲れてしまうなどの理由で、マイフェイバリットにはならない一作でした。そうした個人的な苦手部分も、自分の00年代J-POPイメージだったり。オリコン的には「春の歌」のCMタイアップからロングセラー、累計34万を記録して年間38位というヒット作になりました。

余談ですが自分は「正夢」が大好きです。音が過剰装飾に~とか書いといてなんですが、「はねた髪のまま飛び出した」「ずっとまともじゃないってわかってる」「どうか正夢 君と会えたら」といった、言葉を追うだけで高鳴りが伝わってきそうな感覚を、OASIS的なコード感覚を元に、ここまで音として膨らませて鳴らしあげるの、ほんと名曲だと思います。



さざなみCDさざなみCD
(2007/10/10)
スピッツ

割とずっとハリセンボンだと思ってた
01. 僕のギター (3:18) 06. 不思議 (4:49) 11. ネズミの進化 (3:47)
02. (3:56) 07. 点と点 (3:09) 12. 漣 (さざなみ) (4:47)
03. 群青 (4:20) 08. P (4:19) 13. 砂漠の花 (3:36)
04. Na・de・Na・de ボーイ (4:01) 09. 魔法のコトバ (4:03)  
05. ルキンフォー (4:32) 10. トビウオ (3:37) 収録時間 52分37秒
07年作。12th。総評・★★★★☆
ロックもポップも超え「ただ良い曲を作る」

正式なベスト(シングルコレクション)「CYCLE HIT」リリース、映画『ハチミツとクローバー』の主題歌と、スピッツ健在、勢いをつけてリリースされました。今まで追ってきたように、スピッツは自由な「インディロック」的なスタンスで始まって(初期)、「メジャー」的なスタンスを取らざるを得ない状態になり(中期①)、これじゃバンドとしてアカン!と「ロック」的なスタンス(中期②)をとってきました。そして今作。もう特になんのスタンスもとっていません。バンドとして目指す方向を持っていなく、「こんなのやってみよっか」位しかもうない。厳しい評論家からすれば、「ロックバンドとしてもう終わっている」状態なのかもしれません。

ところがどっこいこのアルバムは滅茶苦茶良いアルバムなんです。まずなんてったってメロディが抜群に良い。諸々を経て(?)ロックもポップスもこだわらなくなったアレンジワーク(魔法のコトバ、P、不思議、漣などに顕著)は、そのメロディを様々なアプローチで盛りたてています。路線としてはある意味「Crispy!」に近い存在だと思うんですが、その時は「無理してる」と言われたそのスタンスが、今作ではものの見事に自然で…。そこにバンドが積み重ねてきた年月を感じずには居られません。特に何もこだわりを持たない、それはつまり「ひたすら良い曲を書く」という着地点だったのです。

例によってインタビュー記事があるので参照しましょう。
インタビュー『スピッツ』|エキサイトミュージック(音楽)
印象的なのは草野さんのこの言葉。「“スピッツ・フィルター”っていうのがあるからね。何が入っても、その味になっちゃうみたいな」本当にそんな一枚。ベタ褒めしてるだけあって好きな曲はとても多いです。文字数の都合で省きますが、色付けで察してください笑。その中でもベストトラックは「僕のギター」。「正夢」の延長、今もスピッツがバンドをやってる理由が凝縮されてるんじゃないかなって位、心震える渾身の一曲です。そっから「桃」ですからね、ほんと強い……。「なんか良いアルバムが聴きたい」方、今作を手に取れば間違いない!




とげまるとげまる
(2010/10/27)
スピッツ

とても素敵なジャケ
01. ビギナー (4:47) 06. 新月 (5:31) 11. えにし (4:20)
02. 探検隊 (3:18) 07. 花の写真 (3:14) 12. 若葉 (4:31)
03. シロクマ (3:47) 08. 幻のドラゴン (3:43) 13. どんどどん (2:54)
04. 恋する凡人 (3:29) 09. TRABANT (3:54) 14. 君は太陽 (5:04)
05. つぐみ (4:06) 10. 聞かせてよ (3:49) 収録時間 56分40秒
10年作。13th。総評・★★★★
純度100%のベテラン安定作は正義

過去最多となるタイアップ曲を盛り込んで作られた、通算13作目となる「とげまる」。そのこともあってか、1年弱もの期間チャート上を彷徨うロングセラーを見せました。前2作で述べたように、スピッツはもう特に新しきを求めてはいません。なので今作の音楽性も基本的に前作の延長線上、安定の充実作といったものに仕上がっています。

曲では、トリッキーなリズムさばきと不思議なコード進行で引き込む「探検隊」、歌謡メタルな人気曲「恋する凡人」、CURE目シューゲなゴスチック調に一部リスナーがガッツポーズするであろう「新月」、趣味丸出しのリフが光る「幻のドラゴン」あたりが面白いです。過去最多の5曲がシングルA面になっていますが、どれもまったり「あぁ良いねぇ」的な曲で、突き抜けた一曲というのは無いアルバムかも。その中でもTRAVISを参考にしたという「若葉」は深く沁みる地味な名曲として、「君は太陽」は一つ抜けた爽快なポップソングでお気に入りです。すました顔して明らかに異端(変態)な草野マサムネが綴る「理想の世界じゃないけど 大丈夫そうなんで」は正直かなり勇気づけられる。相変わらず断言はできず、語尾には「ごめんなさい」とかついてしまいますが笑。


面白いのは「ここで逆にストリングスの量を減らした」ことで、その役割をあえてエレキギターのフィードバックで代用しています。これは過剰装飾な時代を見てこそのカウンター(オルタナティヴ、パンク精神)で、その姿勢は次作、「ストリングス0」という形でもって明確に宣言されることとなります。ベストトラックは開幕曲の「ビギナー。「未来からの無邪気なメッセージ少なくなったなぁ」という一声にはじまり、「だけど追いかける 君に届くまで」と続いてく流れが感動的な名曲です。特に大サビ、「同じこと叫ぶ理想家の覚悟 躓いた後の擦り傷の痛み 懲りずに憧れ 練り上げた嘘が いつかは形を持つと信じている」なんて何時になく頼もしい言葉の綴られ方にはグッとくるものがあります。こういう曲を、真摯に瑞々しく鳴らしあげられる限り、誰が何と言おうとスピッツは素晴らしいロックバンドだと思います。
スピッツ - 「ビギナー」(「とげまる20102011」より) - YouTube




これにてスピッツの全フルアルバム感想は終了となります。ここまで全部読んだよという方、ほんと感謝しかないです。こんな長い文章を…たぶん全部で1万文字は軽いので、誇っていいと思います(?)。こちらも思い入れとのギャップに苦しみつつ、なんとか書きあげました。記事を読んだ方が、何かこのバンドについて思ってくれれば幸いです。一緒に聴きなおしましょう!
「色々衣」などの編集盤については、ちょっと燃え尽きてしまったので、次にスピッツがシングルか何かをリリースするタイミングで書きたいと思います。とにかくお疲れ様でした。スピッツがこれからも末永く活動し、良いバンドであり続けますように。
おわり。


……しかしスピッツの旅は続く。
スピッツ / 小さな生き物 (2013) 感想 

特集記事・スピッツについて に戻る
     

タグ: アーティスト紹介記事

コメント

No title

サム様 こんばんは

>ここからのスピッツには「今」「00年代J-POP」的な響きを感じます。

これは良く分かります。
プロデューサー亀田誠治氏による
プロの仕事が大きく作用していると自分は考えています。

まぁストリングスとかをバンバン盛るのが
「今」の流行なのは確かですし、
きちんと最新の音になっているのは、やっぱり凄いですね。

Re: No title

GAOHEWGII さん こんばんはです

やっぱり亀田氏がうまく仕上げてるんだと思いますね。

あとから付記したのですが、
スピッツが面白いのは、そうした「今の流行」を見てバンドとしてストリングスを使うのを止めたんですよ。
世間のストリングスバラード全盛期、10年発売の「とげまる」で盛りつけをやめて、
去年の新作は「ストリングス0」というカウンター的な挑戦作の形をとったんです。
そうしたバランス感覚の良い、活動姿勢もこのバンドの魅力かな…?って思ったりしてます。

> サム様 こんばんは
>
> >ここからのスピッツには「今」「00年代J-POP」的な響きを感じます。
>
> これは良く分かります。
> プロデューサー亀田誠治氏による
> プロの仕事が大きく作用していると自分は考えています。
>
> まぁストリングスとかをバンバン盛るのが
> 「今」の流行なのは確かですし、
> きちんと最新の音になっているのは、やっぱり凄いですね。

色色衣の評価も聞きたいです

Re: タイトルなし

通りすがり さん、コメントありがとうございます。

> 色色衣の評価も聞きたいです

色々衣はバンドとして試行錯誤してるのがうかがえる内容ですよね。ムーンライトや孫悟空あたりのシンプルでちょっと変な曲、epにも入ってた魚など、シングル曲ふくめかなり好きなアルバムです!
カバーのコンピレーションや編集盤なども、いつか記事にしたいとは思っています。すぐにとはいきませんが…スピッツにニューリリースなどの動きがあった際など、またご来訪いただければと思います!

コメントの投稿


非公開コメント

プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

カテゴリ
Twitter
リンク
クリックで展開
NewCcounter