U2の新作が公式無料DL可能の件、in rainbows、タダで作品に触れることについて

screen-shot-2014-09-09-at-2-00-47-pm.png
U2が最新アルバムをiTunes限定で無料配信する前代未聞の取り組みを開始。ボノ「アップルがアルバムの代金を支払ってくれた」 | All Digital Music
U2が仕掛けてきましたね。しっかりとした計算・管理のもと行われたリリースのようですが、やっぱりこうした超大御所がこういうことをしてくると「オォッ」と思います。

内容、地味ですが良いです。流石にもうド派手なキラーチューンとかは用意されてませんけども、適度に軽やかで中々沁みる、安定作って感じでしょうか。自分のTwitterを見る限り、Irisが人気みたいで。自分はパッと聴きEvery Breaking Waveとか好きですね。

さて、今回はこのリリース方法をふまえて、「タダ」ということについてちょっとダラダラ書きたいと思います。


その1 RadioheadのIn Rainbows
url-21.jpeg
こうしたリリース方法、やっぱりまずはこの作品が思い出されます。Radioheadのイン・レインボウズ - Wikipedia。当時(07年)はYoutubeがやっと生活になじみ始めた位で、Bandcampやらの「name your price」という概念なんて今以上に浸透していなかったワケです。そこであのレディオヘッドの新作が自分で自由に値段を決めてネットからDLできる」「タダでも落とせる」というのはすさまじい衝撃がありました。Yahoo! JAPANのトップ見出しにも名前が踊っていたのを覚えています。ここで、「IT'S UP TO YOU」…多くの音楽ファンに「自分はこの作品に何円払うつもりなのか?」という自問自答をさせたのはかなり大きな意義があったのかな、と今は思います。一手、自分の思考を挟まないといけない感じ。ちなみに実際自分もサイトに赴いてみたんですが、「いやCDが良いんで…」ということでDLはしなかったです。ちょっともったいなかった。

さてこの時のことを思い返して、一番初めに浮かぶのが「やたらリリース方法に注目が集まってるな」ということ。勿論それだけ挑戦・示唆的な試みだったし、語られてしかるべきチャレンジではありました。しかし如何せん自分は「それはそれで面白いけど、ところで内容は?」って感じだったのです。某誌では「果たしてこの作品がリリース形態の革新性以外で今後語られることがあるのだろうか?」みたいな評までありました。酷い。現在では波も落ち着き、In rainbowsは無事レディオヘッドのキャリアの中で位置づけも済み、他作品と違和感なく並んでます。作品自体も高い評価を得、今も作品単体でそこそこ語られています。


その2 U2のSongs of Innocence

さて、U2の今回のリリースです。「iTunes開いたらライブラリにいる、クリックひとつで無料DL可能」というのはすごいですが、今は「spotifyなどを開いて検索、クリック一つでアルバム再生可能」時代なわけで、その点割とインパクトは薄いかも。全く興味ない人含めた全iTunesユーザーのライブラリに勝手に追加されてるというのは「スパム」とも揶揄されてたり、たしかにスマートな感じはしません。そこはU2というよりAppleという存在がある種「縛り」になってしまった気がします。ボノの発言を見ても、何らかの疑問を投げかける「チャレンジ」というより「コラボ先とのプロモーション」という感じ。ともあれこれによって数多くの人、U2…あるいは音楽に興味があまりない人もアルバムをDLして聴いてみる、みたいなことになれば素晴らしいですね。

今はどうしてもリリース方法とそこから生じる議論に目が向いてしまいますが、落ち着いたら他作品と並んでスッキリとした形でアルバム自体が評価されてほしいなと心底思います。というのも、このリリース形態にした結果、今普通ならまず出なかったであろう感想が出てきてるんですよ。「ありがたみがない」とか「思い入れが持てない」など、こんな何とも言えない感想で作品が終わってしまうのは切なすぎる。好きなバンドが作品出したってのに、こんな寂しいことないよ。


その3 そしてタダで作品を聴くことについて色々思う
pay_what_you_want_purchase.png
でですね。自分は前時代の価値観の持ち主なので、「CD大好きDL出来れば避けたいピーポー」です。好きなものは物で持ちたい、フィジカル大好き人間。(ライブ音源など2.3曲ならともかく)無料DLも未だに若干しっくりこない所がある。最近は発売前に期間限定全曲試聴なんてのもありますが、2.3曲聴いて気に入ったら聴くのやめてフィジカルリリースをワクワクしながら待つような人間です。

そして今回、U2の作品。「こっちがお金を払うことなく公式からポチッとDLしただけのアルバム」。特に思考を挟む必要のない圧倒的なお手軽さ。う~ん確かにいつも通りのノリで受け止めるのは難しい。先ほど紹介した「思い入れが持てない」という感想、自分は分かります。好きなバンドの作品だからこそ、「ハイキケルヨー」じゃなく「出しだぜ!皆バシバシ買ってくれよな!」くらいの勢いがほしい。ここでやっぱり引っかかってしまうのは、「タダ」という部分(あるいはお手軽さ)なんじゃないかと。お金を出したか出してないかで愛着や評価が決まるなんて絶対変だとは思いますが、人間である以上やっぱりそういう要素って絶対ある。難しいですね。今回のU2のリリース形態とその感想を見た時、特にそういうことを思いました。

それでもやっぱり、まずは「作品単体」を値段フィルターかけずに聴くのが一番じゃないかと考えます。インレインボウズも最初そうでしたが、「リリース方法だけ気にされて中身が気にされない」なんて最悪です。作品を完成させたバンドにとっても虚しい。新作への期待がある種肩すかしになってしまったファンの方もいるかと思いますが、まずはU2の新作が聴けることを素直に楽しみたいですね。いつも通り、この曲イイネとか言いあいたいです。なんてったって、推定で5億なんて超規模に届けられるんですからね。


とりあえず興味ある人はDLしてみましょう!iTunesで「Songs of Innocence U2」と検索すれば出てきますヨ。フィジカルリリースは来月ですが、アコースティック盤もつくということなので昔堅気の大ファンは血の涙を流しながらもう少し待機しましょう!
Apple - U2の最新アルバム、公開。
     

コメント

No title

サム様 こんにちは

おもしろいテーマと内容の記事でした。

Radioheadの時は驚きでしたが、
これに近いシステムは割と多くなってきましたね。

しかし改めてU2の新譜がタダとなると、またインパクト大です。
そして思い入れが沸かないってファンの気持ちにも納得。
タダだと危機感が無いんですよね。
やっぱり後回しにしがちですし。

それから、
先行でタダでリリースされていたシングルを落としていた自分としては
これも「タダなら入れておこう」というスタンスですが、
ディープなファンは複雑だろうなぁ、と思います。

そして
>まずは「作品単体」を値段フィルターかけずに聴くのが一番
とのご意見はもっともですね。
ただ、ダウンロードの場合、フィジカル盤と異なり、
ジャケを眺めたりとかブックレットを読んだりとかが出来ないってのが痛い。
集中して聴く体制を整えるのって、2014年現在難しいことになったな、と実感します。

以下、話題が少しずれます。

自分が紹介している洋楽新譜も、半分以上は日本ではダウンロードでしか流通していない有様。フィジカルに固執するだけで出会える音楽にかなりフィルターが掛かってしまうような状況です。僕もCDが好きなのですが、やっぱり、こちらが適応していかないと駄目なんでしょうね。

Re: No title

GAOHEWGII さん こんばんわ
まずはとても嬉しいコメントありがとうございます。

思い入れが湧かないっていうの、普段CDで買う自分にとって本当によく分かるんですよね。
特にU2クラスですと、アルバムリリースだけでもうニュースなわけですし…。
シングルなどはまだしも、アルバムがこうなるとやはりちょっと肩すかし感あります苦笑。

フィルターはそうですよね。
聴く姿勢としてもあまり良くないですし、何よりファンの方々がリリース形態だけで作品の中身を過小評価してしまうなんて寂しすぎます。
「ダウンロードはジャケを眺めたりブックレットが読めない」、これが「痛い」というのも共感しきりです。

そのうえで、GAOHEWGII さんの最後の話題は興味深いですね。
面白い音楽は、CDで流通せずとも確かにネットの海には流れてる。そして、自分たちはそれを聞ける。
すごい良い時代だと思います。
でもやっぱり、CDが好きだからネットの海はあまり潜らない。それもまたフィルターですね。
無理に何かする必要はないと思いますが、やっぱり少しは適応が必要なのでしょうね。

長文でお返ししてしまいました。このようなコメント下さってありがとうございます!

> サム様 こんにちは
>
> おもしろいテーマと内容の記事でした。
>
> Radioheadの時は驚きでしたが、
> これに近いシステムは割と多くなってきましたね。
>
> しかし改めてU2の新譜がタダとなると、またインパクト大です。
> そして思い入れが沸かないってファンの気持ちにも納得。
> タダだと危機感が無いんですよね。
> やっぱり後回しにしがちですし。
>
> それから、
> 先行でタダでリリースされていたシングルを落としていた自分としては
> これも「タダなら入れておこう」というスタンスですが、
> ディープなファンは複雑だろうなぁ、と思います。
>
> そして
> >まずは「作品単体」を値段フィルターかけずに聴くのが一番
> とのご意見はもっともですね。
> ただ、ダウンロードの場合、フィジカル盤と異なり、
> ジャケを眺めたりとかブックレットを読んだりとかが出来ないってのが痛い。
> 集中して聴く体制を整えるのって、2014年現在難しいことになったな、と実感します。
>
> 以下、話題が少しずれます。
>
> 自分が紹介している洋楽新譜も、半分以上は日本ではダウンロードでしか流通していない有様。フィジカルに固執するだけで出会える音楽にかなりフィルターが掛かってしまうような状況です。僕もCDが好きなのですが、やっぱり、こちらが適応していかないと駄目なんでしょうね。

No title

サム 様 

ブログ、Twitterといつも楽しく読ませて頂いております。
初めてコメントさせて頂きます。

同じくFC2にてブログをやらせて頂いております、
「私的名盤紹介―真の雑食を目指して」
http://grooveisalliwant.blog.fc2.com/
管理人のSystematic Chaos(@privategroove)と申します。

U2の無料ダウンロードの件、自分はTwitterで話題になっていて
初めて知った(ここ数日iTunesを開いていなかった証拠ですね…)のですが、
どうやらネット上では"U2を知らない"若年層が多かったこともあったようで、
スパムと勘違いされるという事態になってしまったようです。
この日本での反応を知ったら、本人たちからしたら
何とも肩透かしを食らった感覚でしょうね。

RadioheadのIn Rainbowsの時にはまだ中学生でしたので、
ブリットポップ周辺は全く手を付けていらず後追いで知りましたが…

自分の場合もCD大好き人間で、棚にA-Zで綺麗に並べて悦に入っています。
ディスプレイ用に立て掛ける台を買って、ジャケを飾ったりして楽しんで
おります。

CDが無いと、個人的にはライナーノーツが読めないのが大変残念だ、
というのもありますし、実際に、お金を払って円盤を買ったほうが、
その作品を聴く回数は多いような気がしています。
レンタルで済ませた作品やDL購入したものにはなかなか愛着が湧きません。

自分の場合はまだメインストリームの音楽を聴くことがほとんどですが、
CDで手に入らない作品に関しては本当に難儀しています。
輸入型CDショップで手に入る作品はかなり限られていますし、
中古屋に頼るか、都内に遠征するかくらいしか術がありません。
LP再評価の流れもありますし、今後円盤がその地位を復活してくれることを
祈っております。

【追伸】
誠に恐縮なのですが、私のサイト、「私的名盤紹介―真の雑食を目指して」と
音楽座談会様で相互リンクをお願いできませんでしょうか?
御一考いただければ幸いです。

Re: No title

privategrooveさん、こんばんわ
返信が遅れてしまいました、すみません
相互リンク状態となりましたので、これからもよろしくお願いします。

>>「"U2を知らない"若年層」
これはしょうがないですね…向こうでも知らない人はいるみたいですが、
まして日本なら当然の反応かも知れません。
Coldplayであっても知らない人の方が圧倒的過半数ですし…。
「誰?」という反応はおいといて、「誰だろう?」となれば成功かもしれませんね。

>>「自分の場合もCD大好き人間で、棚にA-Zで綺麗に並べて悦に入っています。」
非常によく分かります。自分は時系列順(60年代から今に向かって)並べて悦に浸ってます笑。
そうなんですよねぇ、何かしたお金を払わないと・あるいはモノがないと、愛着が持ちづらいんですよね。
自分の場合、レンタルが一番微妙な印象を抱いてしまいます。聴きこむ気になれない…。

>>「CDで手に入らない作品に関しては本当に難儀しています。」
全くです。廃盤で値段高騰なども最悪ですね…。
円盤が地位復活するにはまだ年月のサイクルがかかる気がしますが、自分もその時を切に願ってます。
東京に赴いたとは中古屋をあさるのを最高の楽しみにしてるので、
中古屋が無くなる(盛り下がる)ことだけは避けてほしいですね…ほんとうに。

コメントの投稿


非公開コメント

プロフィール

サム

Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

カテゴリ
Twitter
リンク
クリックで展開
NewCcounter