心の名盤 blur / blur (1997) 感想

USのグランジ・ローファイに急接近、でもやっぱり何か軽くて英国チック、そんな妙な違和感とポップさが魅力の一枚!英国から米国へ視点を移たサウンドメイクは、blurの転換(次作を考えれば過渡期の)作となった。

ブラー(紙ジャケット仕様)ブラー(紙ジャケット仕様)
(2013/12/25)
ブラー

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俺このジャケット大好きなんだ(意図は良く分からない)
(佳曲)<太字(好み)<普通 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Beetlebum  5:04
02. Song 2  2:02
03. Country Sad Ballad Man  4:50
04. M.O.R.  3:27
05. On Your Own  4:26
06. Theme from Retro  3:37
07. You're So Great (Coxon)  3:35
08. Death of a Party  4:33
09. Chinese Bombs   1:24
10. I'm Just a Killer for Your Love  4:11
11. Look Inside America  3:50
12. Strange News from Another Star   4:02
13. Movin' On  3:44
14. Essex Dogs" (includes hidden track "Interlude")

Total length : 57:01

総評・★★★★★
決して骨太になれないblurの歪な魅力
blurは自分にとって思いで深いバンドだ。詳しくはいつか特集記事を作ろう(それこそ新譜発表とかまた再来日発表が来たら)と思っているが、ここでは本作の制作背景だけ取り上げる。96年、彼らは自国で絶頂期にあったものの、バンドは心底疲弊しており、英国を離れての米国進出も失敗…と、なかなか閉塞的な空気に在った。意図せず属すこととなったブリットポップなるシーンも、既に活気だけで中身のない惨状に陥っていた。デーモンはその様相を見、「ブリットポップは死んだ」と決意を新たにする。今までの英国路線から一転し、「こちらから彼ら(アメリカ)の地をもっと理解しようと思った」「それがブリットポップという言葉に囚われたバンドからの脱却につながる」と、USのオルタナ、グランジ、ローファイといった要素を全面に取り入れて制作されたのが、今作blur(セルフタイトル)である。

90s米国ロックを全面に吸収し、一気に変貌したもの…の…?
解説にはビースティ・ボーイズ、ルー・リード、ニール・ヤングなど錚々たる面々が影響元として書き連ねられており、実際アルバムはUS肌で新機軸な楽曲陣で埋められている。シングル曲「song2」はモロNirvana(とレディヘのjust)だし、track3ではペイヴメント調の壊れたローファイサウンド感が聴ける。随所で登場する無制御なノイズ、アコギの無愛想で乾いた響きも、ひたすらポップでニヒルながら笑顔をふりまいていた今までの彼らにはなかったものだ。新曲調に対して自身の音域を格段に広げて対応したデーモンも評価されるべきだが、今作の主人公はギターのグレアムだろう。USロックに目覚めた彼の、ローファイやグランジといった要素を見事に自身のフィルターにかけて鳴らしあげたギターワークは鮮烈で、本作最大の魅力といっていい仕上がりである。詳しくは個別楽曲記事に筆を託すとして、「脱却」という試みは、間違いなく成功した…が。

US然とした佇まいには至り切れないblur
しかし、バンドとしては十分な挑戦と新展開を見せた訳だが、どういうワケか今作も全然blurなのが最高に面白い。それは、どうしたって軟派・軽い感じになるデーモンの歌声だったり(現在は深みのある声に到達した)、変な捻りのグレアム節だったり、決して「屋台骨支えてます」と強くは言えないリズム隊だったりするだろうが、とにかくこれは、米国に近づいた…でもやっぱり全然UKバンドなblurの作品なのだ。USエッセンスは確かに吸収されてるのに、この歪なグニョグニョ感、どうにも力強くない、(PAVMENTともまた違う)締まりのない音の感じは何なんだろう?それがblurか。完コピは出来ない弱み=個性。その奇妙な佇まいが、弱点であると同時に間違いなく魅力だ。

ここで一旦、英国ロックについて考えてみたい。もう少しですのでお付き合いください

伝統を基に雑多に色々吸収していく。英国音楽の継承者として
自分はUKロックに対して、「色んな要素を興味本位に咀嚼してみながら創作する」のが伝統だと勝手に思っている。それはビートルズやキンクス等の黄金世代しかり、クラッシュ、XTCしかり。そして、blurは間違いなくその系譜にあるバンドだ。英国音楽を体いっぱい吸い込んだ前二作同様、今度は米国という要素が存分に吸い込んだのだ。ブリットポップではないにせよ、このアルバムは思想的には疑いようなくUKの伝統にそった作品である。

バンドにとってもデーモンにとっても重要な一作
彼らは次作においてトータスなどのポストロックなどまで吸収していった。バンドイメージで捉えるなら「パークライフ」が代表作となるだろうが、民族音楽まで踏み込んだキャリア後期も含めるなら、ポップ度・実験度ふくめ本当にちょうど中間点にある本作もバンドの代表作として取り上げられるべきだろう。また、デーモンのソロ作Everyday Robotsまで続く、自国を離れた音楽探究の旅の第一歩…という見方もできる。両者にとって重要作だったように今振り返ると思う。


まとめよう。過去に別れを告げ、blurはココで今までとは違う領域に進んでいった。それでいて、今作はまぎれもなくblurだ絶頂期でこの舵の切り方、その姿勢、揺らがない個性。そこがスゲーカッコ良い。評論家筋からも好意的な評価をもらい、商業的にも記録的大ヒットとはならずも、当然のように全英1位、そして因縁の米国においても70万近くを売り、ワールドワイドという意味では過去最大のヒット作となった。実に探究的でタフな、それでいてどことなく軽い、米国風味UKロックというヘンテコな名作だと思う。

視聴用の動画はこちら

無難に代表曲ふたつを。song2→beetlebum。楽曲については別記事にてー。
     

タグ: 90s 50分台 名作

コメント

No title

はじめまして。

song 2だけが独り歩きしている感が否めないアルバムですが、私は大好きなアルバムです。

ジャケットは海にgreat escapeした後、救急病棟に搬送される患者(=blur?)でしょうか。

Re: No title

camelcowbellさん、はじめまして
コメントありがとうございます。

確かにsong2ばかりが取りざたされてる気はしますね。
自分もそのほかの曲含めて大好きなアルバムです。

ジャケットなるほど、しっくりきますね。そう考えると面白いです笑

> はじめまして。
>
> song 2だけが独り歩きしている感が否めないアルバムですが、私は大好きなアルバムです。
>
> ジャケットは海にgreat escapeした後、救急病棟に搬送される患者(=blur?)でしょうか。

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プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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