Damien rice / My favourite faded fantasy (2014) レビュー


マイ・フェイヴァリット・フェイデッド・ファンタジーマイ・フェイヴァリット・フェイデッド・ファンタジー
(2014/12/10)
ダミアン・ライス

Nice Jacket
良いアートワークです。紙ジャケの質感もまた良くマッチしています。

(凄く良い)>太字(良い)>普通 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック

1. My Favourite Faded Fantasy  6:12
2. It Takes a Lot to Know a Man   9:33
3. The Greatest Bastard   5:04
4. I Don't Want to Change You  5:26
5. Colour Me In  5:18
6. The Box  4:27
7. Trusty and True  8:09
8. Long Long Way   6:21

Total Length 49:50

総評・★★★★★
空白を歌い切り新しい一歩を踏み出した復活作 その表現力に唸る

レーベルはワーナー、ダミアン・ライス、8年ぶり3枚目のフルアルバム。詳細はビルボードの記事をどうぞ。自分はダミアンライスに特に思い入れがなかった。1枚目をサラッと聴いて「フーン」、ライブ映像を見て「生だとすごいな」これ位の印象だった。しかし今作、コレは最高傑作だと思った。
 
シンガーソングライターは基本的に自分から湧き出たものを表現活動の糧とする。一人で音楽を完成させるわけではないが、音楽を作り始める時は一人だ。1stアルバムでの誰も予想しえなかったであろう記録的メガセールス、続く2ndも大ヒットを記録するなか、ダミアン・ライスはそこでポピュラー音楽の喧騒に埋もれてしまった。表現意欲が閉じてしまった彼は音楽を作り始めることが出来なくなり、ツアー生活でパートナーとの関係も壊れ、いつの間にか8年もの時が経過してしまっていたのだ。そんな彼が、名プロデューサー「リック・ルービン」との出会いも経てついに新作をリリースするに至った。今作、「My favourite faded fantasy」である。

制作背景もあっていつも以上に寂寥感が漂っているが、それを単に悲しみとして飲み込まない不思議な声の説得力は健在だ。何より、今作は楽器隊が曲情に折り重ねられている点が素晴らしい。自分はボーカルが「終盤感極まって声を上ずらせる」みたいなのにグッとくる人だが、この作品はそれをバックの演奏でもやっている。フォークの屋台骨、詩情がその声と弦楽でもってダイナミックに迫ってくる。ここに惚れた。歌われるのは人生における出会いや別れ、すれ違いといった複雑な感情であり、鳴らされるのもまた複雑な思いである。そこに歌声が、静かな説得力をもって曲に一本槍を通す。この表現力の高さ。充電期間に加え、セルフプロデュースからリック・ルービンを迎えたのが功を奏したのだろう。

コンセプチュアルという訳ではないが、アルバムは一つの物語のような構成になっている。新たな恋に不安を抱く主人公は、お互いを理解する困難さにとらわれ、すれ違いなどを通して別れを決意する…こんな解釈が出来ると思う。制作背景を考えても、やはりこの構成はダミアン・ライス本人の心情と重ね合わせて見てしまう。しかしアルバムは、そこから新しい一歩を踏み出そうとするところで終わる。最後に繰り返されるフレーズはこうである。「Not Enough...Not Enough...足りない、足りない。そう歌う彼の後ろには、本当に希望に満ちた旋律が寄り添っている。長い月日がかかったが、彼は音楽の世界に帰ってきたのだ。自分は熱心なリスナーではないが、一つの作品として、そこには感動と説得力がある。素晴らしい復帰作だと思う

ただこの大胆なストリングスアプローチはかなり好みが分かれそうだ。「くどい」あるいは「ワンパターン」と捉えられもするだろう。根本の質は保障されてる人なので、今作の評価は曲毎に繰り返されるこの劇的なアレンジワークをどう取るか次第じゃないだろうか。ただ、多くの人が何かしら思うことがある、なんというか、非常にたくましくて骨のある作品に感じた。訴えてくるものがあり、きっと古くならないと思う。往年のファンからするとやはり1stが一番なのかもしれないが、自分には今作が一番しっくりきた。2曲目から9分台、終盤に8分台なんて構成といい、その力の入れようには姿勢を正した。

個人的な評価として、★5つ付けたのは今年2作だけだ(もう片方は未記事化)。曲を聴いて興味湧いた方には是非すすめたい。

激情にまみれていく表題曲と、良メロ感と後半の展開が感動的な曲とでどうぞ。できればフルでお聞きくださいな。

歌詞を見つつ、久しぶりに全曲感想もつけたので、動画から聴きつつ気になった方や購入済みの方などはどうぞ。この記事を補足する内容になっています。
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総評・★★★★★(傑作)

My Favourite Faded FantasyMy Favourite Faded Fantasy
(2014/11/10)
Damien Rice

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購入はできれば対訳つき国内盤で…と言いたいのだが、仕様が充実しているとはいえ税込2600円、輸入盤と1000円近く離れてるという…。これは嬉しくない。勧めるのは迷う所だが、詳しい背景もあるので、作品を租借するにはやはり国内盤が一番かと。
     

タグ: 14年 40分台 傑作

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プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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