10曲で振り返る浅井健一のソロキャリア、その魅力(1/2)

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浅井健一。1964年生まれ。ブランキージェットシティを筆頭に、シャーベッツやJUDEなど様々なバンドで活躍してきた(している)ロックミュージシャン。UAからは「詩人」、椎名林檎からは「歩く芸術」と称される。なんかカレー屋haracchi(ハラッキ)を運営してる。10年代に入って高音が厳しくなってきた。そうした基本情報はウィキペディアで見ることができます。主にその評価はBJC時代によるものが多いです。

今回は、あえてBlankey Jet City期を抜いて、彼の音楽性の魅力について自分なりに書こうと思います。もちろんブランキーが嫌いなわけじゃない(後追いですが大ファンです)。しかし以前から、「浅井健一」「SHERBETS」として鳴らされた音にももう少しスポットが当たっても良い頃なんじゃないか?と感じていたので、こんな記事を書いてみる次第です。自分なんかよりよっぽど長く彼の活動を追い続けている方々、ブランキーファンだけど何となくソロは作品数も多いし中々手が出せてないという方、正直あんまりこの人好きじゃないんだよなという方、てか誰?という方(是非聴いてみてください!)。誰かの何かのキッカケになれば幸いです。

前置きが長くなりました。これは外せぬというもの、自分の好みとで選んだ10曲(この記事では5曲)です。ほぼ時系列順に、代表曲っぽいの多めに並べました。彼のこれまでを追いながら、その音楽性の特徴などなど見ていきましょう。


1. みず / SHERBET
1996年発表。Blankey Jet City(以下BJC)が一度足を止め、浅井健一が初の別名義バンドSHERBETとして発表した「セキララ」、その記念すべき一曲目を飾るのが「みず」です。当時すでに32歳なのはよく考えると結構驚き…。
BJCの初期から、浅井健一の書く詩はよく「純粋」という言葉で表現されてきました。その根拠は色々あるんですが、まずはコレを聴いてみてください。どこか幼さを感じさせる浅井健一の声(煩わしく感じる方も多いと思いますが、ピッチのずれはこの人の持ち味なのです)、添えられた伴奏、その音色、詩に込められた感情のどれもが澄んで聴こえる。この曲をして「みず」と名付けるその感性。ここで歌われる思いが、今にまで続くこの人の基本姿勢となっています。まさに原点ですね。零れ落ちそうなアウトロが沁みる。

「もしも誰かを愛したら 素直なその気持ちをその人に伝える 
それがこの世界へ生れ落ちた理由だから」


セキララセキララ
(1996/07/24)
Sherbet

中古は比較的安い
アルバム自体も邦楽の歴史にさりげなく残るものだと自分は思ってます。アコースティックサウンドを中心に曲調広く、独特な和音進行と共に自身の詩世界を表現していく名作だよ、と勧めたい。特にシンガーソングライター好きは一度聴いてみてほしいです。


いきなりベタ褒めで始まって申し訳ない。所々でツッコミも入るので(?)あまりファンじゃない方も最後までどうぞ。



2. HIGH SCHOOL / SHERBETS
1999年発表。前曲とはまさに真逆のドライビングチューン。こういう路線の方がパブリックイメージでしょうか。BJCが売上的に全盛期の中わざわざソロ作に収録されたこの曲は、「何故BJCで発表しなかった?」ときたる解散を噂された曰く付きの一曲でもあります。
ロックの定型文のような一つのコード進行だけで3分間を駆け抜けていきますが、よくある進行からよく分からない音を取り出すのもこの人の特徴です。加速していくスリリングな音使いは全く息つく暇をあたえない。クソローファイにキれたオルタナ具合、命知らずで刹那的な歌詞、それでしょっぱな歌いだし「HIGH SCHOOL」ですよ!もう笑うしかありません。特攻ヤンキーのテーマソング。バイク乗りながら聴いたら両手離しでもかましたくなりそう

「High School 先生が僕に聞いたおまえの夢は何かと 
Faye Dunaway, vietnam boy, chicken dance, Midnight Cowboy
夢は できたてのホットロッドであいつ迎えにゆく  
夢は 壮絶な最期を遂げることじゃない」


SIBERIASIBERIA
(1999/07/28)
SHERBETS

280円コーナーによくある
SがついてオルタナロックバンドになったSHERBETS。セカンドはバンドサウンドが聴ける作品で、BJCとの違いを意識して聴くのも面白い。これもグレートな作品です。ちなみにシャーベッツの最高位は今作の15位で、BJCと同じくここらが売上的に最盛期でした。余談です。



3. グレープジュース / SHERBETS 
2000年12月発表。この年の初めにBJCは惜しまれつつ解散しましたが、彼の創作意欲は逆に加速。ここからしばらく、もー意味不明な速度で作品をリリースしだします
ところで浅井健一という人の表情を意識して見たことがあるでしょうか。ちょっと戻ってトップ画像を見てみてください。この人は基本的にいつも、本当になんとも言えない複雑な表情をしています。怒ってるようでもあり(視線を合わせられる気がしない)、何か冷めたようでもあり、覗きこむと少し優しそうな瞳にも見える。とにかく、その心の内が単純に読めない

その感覚は音楽性にも表れています。この曲の雰囲気はまさにそうで、明るいとは言いづらく/かといって哀しんでいるとも違く/暗いようだがそれだけでもない、セピアな心情図。他には中々ない、こうした曲調はまさに浅井健一の真骨頂かなと。(研究してたんですが、彼のこの手の曲のポイントはmM7にあたる音のはさみ方にあると踏んでます。)SHERBETSのグルーヴも洗練され、この奇妙な世界をよく彩っています。「シートを倒して二人で旅に出ようぜ 小さなバッグにはグレープジュース」からリフに至る所の映画感覚も聴き所。

「ママ 人はどうして殺しあわなくちゃいけないのだろうね
ママ ロックンロールって何 それはきっと楽しいことなんだろうけど」


AURORAAURORA
(2004/10/06)
SHERBETS

ジャケ無の正規品もあります
収録はSHERBETSの三作目。今に至るまで毎度指摘される「収録曲のクオリティ差」「歌詞の適当さ」については、個人的にはこの作品あたりから徐々に見られるようになってしまったように思います。とはいえまだまだ力作。



4. 美しいこと / AJICO
2001年発表。UAと組んだスーパーバンド、AJICOでの一曲。それぞれが独特な味を持つ浅井健一とUAの声の重なりは、一般に言われるような綺麗なハーモニーを産むものではなかったですが、ゆえに天真爛漫な佇まいがありました。その魅力が詰まったのがタイトルずばり「美しいこと」。力強い出だしが印象的で、対比してのGm6から始まる哀愁あるサビが絶妙です。普段出てこないようなコードをメインに持ってくる、ノリでどんどん転調していく、そんなロマンティックな進行も彼の持ち味で。AJICOではそれが前面に押し出されています。この雰囲気、ファンは多いはず。

「僕には見える 美しいことが どんなに弱くても 美しくなれる
素直な心で 生きてくのさ どんなにキズついても 素直な心で」


深緑深緑
(2001/02/07)
AJICO

280円の常連
残念ながら半年ほどで解散しましたが、AJICOとして残した2作品はどれも素晴らしいです。ベンジーの抒情的なギター、UAのあの独特な歌声、TOKIEさんのうねるベース、一歩引いて全体を占める椎野恭一と、そのグルーヴ、バンドとしての充実度はライヴアルバム「AJICO SHOW」(名盤!)でも確認できます。浅井健一がどうしても何か苦手という方は、AJICO作品を手に取ってみるのが良いかも


http://youtu.be/1g1EM163S9E 動画ははれなかったので、リンクでどうぞ
5. 38Special / SHERBETS
2000年10月発売(掲載順を意識して時系列を入れ替えてます)。BJC解散後の初リリースはかなり強烈な一曲が届けられたようです。言葉を投げかけては、それを「腐ってない」と吐き捨てていく、ブルーズ新解釈みたいなロックソング。そのメッセージ性もさることながら、耳をひかれるのはそのエネルギー量です。エレファントカシマシの「ガストロンジャー」とも並べられるそのパワーは尋常でなく…この曲については多くは語りません。Listen。

「原発とかさ 政治経済とかさ 歌謡曲とかよ 腐ってない」

この曲はロッキンオンへの暴力事件、その契機になったともされます(詳しい事実は今も不明ですが、事件の存在には触れます)。そんな問題児であるこの曲は、ベストを含めアルバムに収録されてません。もしモノで手に入れるなら、マキシをチェックです。
38 Special38 Special
(2004/09/29)
SHERBETS

こんなジャケットなのに…




…いつもどおり長くなってきましたね。ここまでまず5曲あげましたが、どの楽曲もその表情は全く違います。清濁入り混じったその曲調・感情表現の幅広さが浅井健一の音楽の魅力だと思ってます。次回は時計の針を進めながら、また違う視点で彼の楽曲を見ていきたいと思います(その2へ続く)

画像出典・http://blog.takehiko.info/category/20019753-1.html
     

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コメント

No title

今日は、浅井健一さんは、何年か前に 危険すぎるが、ラジオで流れて、すぐにその曲が入ったCDを購入しました。
しばらく聞かないとまた聴きたくなる常習性は多分その幼さ加減と音ハズレが微妙に魅力となっているのではなかろうか。
ルーリードやディランみたいに。
と思っております。

Re: No title

jamkenさん、コメントありがとうござます。(返信が遅れてすみません)

そうなんですよね、ずっと聴きたいというよりは、ふと思い立ってしばらくマイブームになるというか…笑
やっぱりあの声、歌い方は麻薬的ですね。好き嫌いは分かれますが…やはり魅力、味です。

その二方と並べるとだ大分いろいろ心もとないですが苦笑。オリジナリティは間違いないです!

> 今日は、浅井健一さんは、何年か前に 危険すぎるが、ラジオで流れて、すぐにその曲が入ったCDを購入しました。
> しばらく聞かないとまた聴きたくなる常習性は多分その幼さ加減と音ハズレが微妙に魅力となっているのではなかろうか。
> ルーリードやディランみたいに。
> と思っております。

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Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

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