blur / TheMagic Whip (2015) 全曲感想

blur12年ぶりの新作「魔鞭」を全曲みていきます。自身のバンドキャリアの振り返り、各ソロキャリアでの成果の持ち寄り、それによる新しいタイプの楽曲もありと予想以上の充実作で嬉しい限り。内容はアルバム購入済の方向けです。

赤(佳曲)<太字(好み)<普通 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック。公式で上がっているものについては曲感想の下にリンクをはりました。



1. Lonesome Street  4:23
ブラーの新作発表は最高にうれしい出来事だが、何と言っても最大のトピックは「デーモンとグレアムが再び力を合わせアルバム制作に取り掛かった」ことだと思っている。二人のコンビネーションの良さは「13」までのブラー諸作品で証明済みだが、その後のグレアムblur脱退、一時期の疎遠状態、リユニオンときてついにの新作の一曲目がコレなのはニクすぎる。誰が聴いたってブリットポップ期を意識している曲調に声、それに加えて開幕からデーモンとグレアムのツインボーカル!演出家だ…。楽曲としては割と普通ながら、このバンドサウンドを聴かされるとファンとしてはニンマリせざるをえない。
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2. New World Towers  4:03
続いては非常に「最近のデーモン」といった調子の陰りあるミディアムチューン。それこそ直近のソロ作「Everyday Robots」にも収録されていそうだが、このギターの取りいられ方はソロ作にはないもの。自分はグレアムのギター大好きマンだが、彼の持ち味は「ココちょっとギター弾いて」という時のギターラインの秀逸さだと思うんですよ。

3. Go Out   4:41
前曲からの流れが良い。一番最初に公開された本作のリードトラック…だがキャッチー要素はほぼない。外し気味の進行と屈強なリズム・ベースの上で、ギターが縦横無尽に暴れるかなり捻くれた怪曲。グレアムを全面に押し出したかったのが良く分かるし、それが魅力だ。大体アルバムは「ブラーっぽい」「デーモンっぽい」「グレアム押し」「最新型のブラー」の4つで構成されてると思う。孤独な中年の哀愁ある歌詞だが、曲調のせいで歪で過激な印象が残る。主人公はこれからタクシー・ドライバーでも決めそうだ
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4. Ice Cream Man  3:25
これも最近のデーモンっぽい一曲。自分はそこまでゴリラズ後期あたりからのデーモンの音楽にハマれてないが、ブラーの冠のもと再構成されると何か曲がしっくりくる。陰気さ(失礼)がうまく緩和されるからだろうか。レゲェ調に感じるのにレゲェではない不思議

5. Thought I Was a Spaceman  6:16
個人的な今作の押し曲1。多分着想はデーモンなのだろうが、各メンバーがよく個性を発揮しており個人的に「最新形のブラー」を感じる。アンビエントな展開からバンドサウンド形態で盛り上がっていき、最後はギターもきまってとこれは各々のソロ作じゃこうはならなかっただろうスケールの曲構成だ。タイトルも秀逸。

6. I Broadcast  2:51
このアルバムの魅力の一つに曲順があると思う。「blur(セルフタイトル作)」からのアルバムは、音楽性が広がりすぎて一枚をダレずに聴かせきるような曲順ではなかったが、今作は緩急が巧みで最後まで気持ちよく聴ける。この曲は初期ブラーを思い出させるアップチューン。やっぱりこういう曲たまにはやってほしい。作詞はパークライフ期を意識した皮肉的キャラ設定。
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7. My Terracotta Heart  4:05
押し曲2。音数を抑えた沈静で湿ったバックトラック・軽いソウル要素を含んだ歌唱・さりげない電子音の装飾という、「っぽい」というか「完全に最近のデーモン」な一曲…だが今作では編曲はデーモンでなくblur。ということでソロ作とは異なってくるベースとギターのアプローチが聴きどころ。良い仕事してます。やっぱり自分にはソロ作よりシックリくる。メロディはかなり端正で、後半の歌唱は歌詞も踏まえるとなかなか泣かせる。良曲。
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8. There Are Too Many of Us  4:25
仰々しいストリングスにマーチング的なスネアの入り、ひたすらワンコーラスを繰り返す構成といい、誰の作品でもこの曲が生まれるのは想像しにくい。この曲も「最新のブラー」枠かな。タイトルが示す通り人口過多に伴う未来への憂い・警告の一曲。ポップさとメッセージ性のかみ合い具合は地味な名曲out of timeを彷彿とさせたりも。
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9. Ghost Ship  4:59
前と対照的な曲配置が多い。これはリラックスした雰囲気がただよう南国チックな曲。最初はなんの印象もなかったが、よく聴くととても良かった。スキマを意識したアンサンブル、いつになく気のきいたコード進行が心地よい。しつこいけどGtが良…いや、ほんと一味加えるセンスはポップの理想形に感じる(だからデーモンとの相性の良さを感じる)のです。


10. Pyongyang  5:47
タイトルは「ピョンヤン」でメッセージ性強め。コーラス部の出来は良いが少し冗長な気がする。アルバムとしては重要な一曲。このあたりの考察については国内版の解説がジャケット・タイトルの意味から詳しく取りあげているので是非一読を。

11. Ong Ong  3:08
押し曲3。THE☆UK(そして中年感のすごいユルユルな)コーラスワークからして微笑ましいポップソング。しかして一時期の疎遠ぐあいからこの曲にたどりつくまでの年月を考えると割と泣けるものがある。実際ものすごい良い曲です。ソロも良い…。全編にわたる貢献具合、ほんと嬉しいですよ。歌詞のコーラス部で歌われる「I want to be with you」(僕は君と一緒にいたい)が、最後だけ「I will be with you」(僕は君と一緒にいるだろう)になるという感動的な帰結があるが、このyouがblurであることを願うばかり。末長く仲よくネということでベストトラック。
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12. Mirrorball  3:39
ブラーおかえり感に包まれた良くないファンとしては、前曲でクライマックスを感じてしまう。本編最後はエスニック風味のきいた暗い一曲。中国を意識しての作曲、このあたりはいかにもデーモンの発案だろう。アルバムとしては重要な立ち位置なのだろうが、あまりこの曲が印象に残らず終わってしまう。意図は国内版の解説を読んでフムフムとなるばかり。



デーモンの非英語圏への関心、グレアムの英国&無国籍ギター、バンドルーツの軽い振り返り…と復帰作としてその懐はかなり広く、非常に力のこもった復活作。流石に新たな代表曲と呼べるような一曲がないのは残念でもあるが、このクオリティなら十分すぎる。何度でも聴き返せます。ファンの方には是非是非手に取ってほしいし、ブラーが初の方にも何気なく勧めたい。購入の際は、一見して意図不明なアートワークなどの解説もあり、中々奇妙でかっこいいインストのボートラも付属した国内版がオススメ。ただ国内版は2600円というこれまた泣ける値段である。
総評・★★★★
     

タグ: 全曲一言感想づけ

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サム

Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

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