Tortioise / TNTを聴く① ポストロックの魅力・その代表作を改めて考える

7年ぶりの新作「ザ・カタストロフィスト」とても良いアルバムで、特にGesceapは名曲)も好評な「Tortoise」(トータス)。90年代に「シカゴ音響派」なる一派に括られ活躍、多方面の音楽シーンに影響を与えたポストロックバンドだ。今回取り上げるのは、「固定化されたジャンルやスタイルを超えた、新しいミュージックを創ろう」と90年代初期に始動した彼らが激動の1997年にリリースした、トータス自身、そしてポストロックの代表作ともなった「TNT」だ。
安定のクソジャケ
このアルバムはいろいろな視点で捉えられている。まずは音楽雑誌などの評価もふまえつつ、自分が思うこのアルバムの魅力をまとめてみようと思う。以下だ。
 

今では常識となってしまったが、1997年当時においてデスクトップ上でのスタジオワークの完結が可能になった時代(ここではProTools)の可能性を無数のシーンに知らしめた。

そこではもはや「生音と打ち込みといった区別」もなく、「どのプレイヤーが弾いた音か」も関係なく、グリッチノイズから何も全てが単に"音の素材"として…─その編集作業すらどこが誰の手によるものか把握できないほど無造作に転がされながら─…完成された楽曲と、その作曲プロセスだけがアルバムとして残った。それによって電子音楽以外には今までなかった匿名性が、ポストロックの名の元に新たにもたらされた。同時にその編集作業の緻密さによって、「ポストプロダクション」(録音後の諸々編集作業)という言葉(視点)の普及にも一躍買ったように思う。

そこで鳴らされたのは、まさに最初にメンバーが始動した理由そのものの音で、今作はジャズ、アンビエント、クラブミュージック、映画音楽といった諸々の括りから抜け出して、"ミュージック"そのもののアルバムとなった。そうした制作によって今作を「のっぺらぼう」と評し敬遠する人もいたが、トータスは今作において、その画期性を持ちつつも音としては「ポップアルバム」に収まるという奇跡を起こした。聞き流すにも傾聴するにも耐えうる稀有な一作。見知らぬ風景であって懐かしく、異物であって心地よい、そんな音がこの一枚からは流れだしてくる。



こんな感じだろうか。実際いつもならこれでもうこの記事は終わりなくらいだ。が、上のように「確かに言葉尻的に凄そう」とは思わされるものの、何ともぼやけた感想と印象しか持てないこのアルバムを聴くたび、好きだなーという気持ちと共に、こうも思っていた。


「このアルバムはそんなに名盤なのか?」


音楽雑誌などの評価が刷り込まれているというのもあるが、間違いなく意義深いアルバムだとは思う。さっき書いたような文章も、自分の正直な気持ちと感想・感動からしか書いてない。ただ、どうにも「名作だ!」と呼ぶにはとにかく直接的な言葉にしづらい作品だと思っていた。他のブログ記事などをみても、上のような印象とシーンにおける影響を書いただけで、中身についてはあまり触れられていないことが多い気がする。セカンドを最高傑作とする自分の好みもありつつ、なんでこんなに扱いが良いんだ!?という気持ちを前々から持っていた。ということで改めて、ある意味では敵意をもって(?)、久しぶりに本腰をいれて、この2016年に1997年の今作と向き合ってみたのだった。



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両者緊張の面持ち



結果、「こいつぁ素晴らしいアルバムですよ…」となってしまった。わずか数行での即落ちだった。


それは自分の思う「ポストロックの素晴らしさ」と共振したからだった(今では死語のような言葉になってしまったが…)。その言葉が指すのは、先人たちの音楽を理想とするあまりその形式と表面の模倣に終始してしまうようなツマらない響きでは決してなく。「ポスト」の言葉通り、しっかりとした過去とともに、鳴らされていく音に可能性の広がりがあって、今が導く更新点も浮かびあがってくるような、そんな………



ということで今回は、ともすればBGMとして聞き流してしまう「TNTの魅力」についてと、「自分の思うポストロック論」を、アルバムに関わる3曲から書きまとめたいと思ったのです。今回はアルバムの概要にふれたところで終わりにします。次回はアルバム収録曲の「Jetty」に焦点をあてて、ジャズ畑のトータスとも呼ばれた「Isotope217」、ドラムンベースの革命児「Squarepusher」と一緒に当曲を聴いていきます。次回もお付き合いいただければ幸いです。


Tortioise / TNTを聴く② 「Jetty」~Isotope217、Chicago Underground、"ポスト"ってなんだ

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タグ: フォーカス 90s ポストロック

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Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

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