後追いの自分が聴いてきた、Princeのこと

Princeが逝去した。2016年4月21日、享年57歳。数日前まではまさにツアー中であり、この2年間でもフルアルバムを4枚(!)リリース済み。相変わらずのワーカホリックぶりに加え、届けられる音源から伝わってくる充実した創作活動。本当に誰も、こんな日が、このタイミングで来るとは思っていなかった。そのニュースは世界を駆け巡り、すぐに多くの著名人、ミュージシャンが彼の功績を讃え、追悼の句を寄せた。
[追悼] 世界的な歌手 プリンス死去 - NAVER まとめ

この訃報からもう1カ月がたつ。自分はPrinceに関して往年のファンではなく、完全に後追いだ。彼の予測不能な活動を昔からずっと楽しみにしていた方々の悲しみは計り知れない。スターの宿命ではあるものの、その訃報からの世俗的な動きには何とも言えない気持ちになってしまう。遺産相続問題に未発表音源の行方、ゴシップまじりの死因究明…とにかく慌ただしいが、まずは彼の音楽、遺してくれたものをもう一度、少しずつ振り返っていきたいと漠然と思っている。

これはいつもみたいな紹介記事でも、追悼記事でもなくて、個人的なメモ書きみたいなものだ。自分は前まで、Princeはむしろ「嫌いなアーティスト」だった。それは単純にインディ・オルタナ好きからくる80sスターへの適当な悪印象だったり、ファンクに興味をもって初めて手にしたPrinceのアルバムを聴いたときの、音のチープさ、ひたすらクエスチョンマークと違和感しかなかった初印象のせいでもある。そこから彼のライブパフォーマンスの凄さを知り、「アルバムの音が苦手」に格上げされた後、あるアルバムを聴いてパーンと大ファンになってしまい、今に至っている。そこで、自分はこの人の”何”に魅力を感じたのか、どんな聴き方をしてたかとか、自分にとっての、後追いの現在進行形をまとめておきたいと思った。

今回はその前段として、Princeを聴いていて、常々感じていた二つのことを書きたい。



Princeを知る楽しさ
自分がPrinceの音楽を聴きこんでいく時、まずこの人について調べるのが最高に面白かったというのがある。上の画像は彼のシンボルマークであり、一時期のPrinceの芸名(!)だが、そこに至るまでのいきさつがまず凄い。

レコード会社と強い軋轢・契約問題が生じた結果、プリンスはアルバムに”Prince 1958 - 1993”と記し、Princeの死を宣言した=その名を捨てた

(ギリギリわかる)

そして、突如”謎の記号”に改名した

(?)

誰もその記号を読めなかったし、プリンスも説明しなかったため、彼を音声で呼ぶことができなくなってしまった。」

(???)

「ひとまず音楽DJらは、彼を”The Artist Formerly Known As Prince”(かつてプリンスと呼ばれたアーティスト)と呼ぶようになった(その頭文字をとってTAFKAPという略称も生まれた)


今なら「話題づくりか?」と疑うが、この人の場合は単に業界へのガチの反抗表明だったというのだからタチが悪いすごい。

ほかにも、

歌って踊ってギターにピアノを弾いてのフルコンサートを終えたあと、それに飽き足らず地元のライブハウスに赴き、自分の好き放題に新曲・演奏を繰り広げる”アフターパーティー”をしょっちゅう演っていた

これは本当に超人的というか、正直引いてしまうくらいのエネルギーで、音楽愛がなせるものなのか何なのか…。自分が知るどのミュージシャンもこんなことまではしない(実際に動画も残っているのだが、この人についていくバンドメンバーは苦労するなんてものじゃないなと見てて感る。しかも本ライブは原曲別アレンジ&メドレー披露&寸劇の演技まで要求されるのだ…)。とにかく、いちいち行動が常人の発送から突き抜けすぎているのだ。そのくせ妙なところでは人間臭いし…。また、変態みたいなジャケットも、今でこそとても好きな一作だが、最初は笑ってしまった。ジャケットや映像センスには"定評"がある。

しかし、そうした一見するとネタでしかない話にも、調べていくとしっかりとした意味があって、彼の表現者としての絶対的なプライドや姿勢を知るたび、(全てに納得するわけではないが)唸らされてしまうのだ。一枚のアルバムにこめた情報・メッセージ量は尋常でなく、一聴して聴きやすさと違和感を同時に覚えるような音楽性、突き放すと同時に強烈に訴えかけてくるような作風も、色々なことを調べながら聴きこむことで、パズルのピースがはまっていくような感覚があった。キャリア後期はそうした掴み所のなさは影を潜め、聴き手を優しく諭すような作が多くなったものの、ここにもやはり明確な意図を感じることができる。全作通して、すさまじい懐の深さを持ったアーティストだと思う。


NPGRecords.jpg
加えて、どこかのファンが書いた感想、考察をネットで調べるのも楽しいのだ。例えばこういったサイトがある。
【partymind】 - プリンス(Prince)のファンサイト(愛にあふれる)
PRINCE作品紹介(辛口ときどきベタ褒め)
俺の好きなアルバムたち - livedoor Blog(ブログ)(作品多し、文充実。HitnRun Phase Twoのレビューはもう…)

ほか、アルバム名で検索してヒットしてくるサイトあれこれ。多くのサイトが、思い入れの強さや、捻くれたとらえ方、色々な視点をもってて――だから自分は音楽ブログ・サイトが好きなわけだが――そうしたサイトを眺めながら、(自分にとって)新しいアルバムを買っては、「これよく分からないな……」→「聴きこんでくと好きになってきたかも」→「こういう見方もあるのか」という流れを繰り返し、自分はよりPrinceのことが好きになっていった。

そして、どんな音楽もたゆまぬ努力で我がものとし、メッセージをのせ、なおかつポップとして仕上げてしまうこの人から、自分が興味を持つ音楽も一気に広がった。特にそこからちょうどライブを見るに至ったディアンジェロのパフォーマンスは…本当に素晴らしかった(内容は下記リンクにて)。縦にも横にも視界を広げてくれた。
D'angeloのLIVEについて振り返る(SUMMER SONIC 2015 感想)

こうしてみていくと、やっぱり自分も何かしら、このアーティストについて書きたいと強く思う。彼の作品は多すぎてまだまだ聴き切れていないが、一般的に流通したオリジナルアルバムを(リンク内、スタジオアルバムの項を中心に)一通り取り上げていくところから。自分と同じように誰かがこのページを読んで、さらにその音楽や人に興味をもつことがあれば幸いだ。自分も改めてPrinceを1から聴きこんでいく中で、色々なことを再発見していきたい。全世界の何人が何行で何作語っても、この人について語りつくせる日は来ないと思う(だからこそ、そのリアルタイムをもう追うことができないというのは、考えてみればみるほど、本当に悲しいことだけど…)。そんなアーティストについて、もし記事からコメントやリプライで話を深められたら、嬉しい限りだ。



"曲"を聴くというより"Prince"を聴く?
アルバム感想を始める前にもう一つだけ。このブログではよく「特集」という形で、アーティストの簡単な紹介、初めて聞くなら、全アルバム感想といった要素をまとめた記事を更新する(この辺はトップページを見ていただければ)。今回も、及ばずながら、そうした記事を書くことも考えはした。

が、Princeにかけては「初めて聴くなら」というのが全く思いつかなかった。ヒット作としては文句なしに『Purple Rain』だろうし、無二のものとしては『Parade』、総合力では『Sign o' the Times』、聴きやすさなら『Prince』、今の時代を踏まえると『3121』『Art Official Age』かなぁと漠然とは思うが、どれも相応しくて、相応しくない気がする。同様に「最初に聴くならコレ」というのも、ヒット曲を羅列するだけなら簡単だが、真剣に考えるとすごく難しい。「Princeはこれです!」って、言えない。ベスト盤もあるし、キャッチーな曲もいくらでもあるが…何か重要なのはそこじゃない気がする。


多分、Princeを聴きこむには、「この曲良いな」って感覚以上に、まず「Prince自身に興味を持つか」が重要になってくるんじゃないかと、初めて聴いた『1999』で嫌いになり、数年後聴いた『Lovesexy』で一転、文字通りハマり、そこから一気に大ファンになってしまった自分の経験から何となく思う。この人のアルバムは、単に聞き流しても聴き手それぞれの「好き嫌い」の評価には至れるけれど、それだけじゃ足りてない感じがあって…音楽としての好き嫌いを超えた所("そこ"をなんて呼ぶか分からないけど)にもまた魅力が存在するように感じる。特に、アルバム単位で聴くと。この違和感は何だろう? この歌詞はどういう意味だろう? そういった疑問から、"そこ"に近づく気がする。

うまく言えないが、とにかく、Princeのアルバムとキャリアは、しっかり見ていくと本当に面白い。もしこの悲しいニュースをキッカケに「Princeを聴いてみよう」と思ってアルバムを手に取り、「音ひどい」とか、「時代を感じる」、「良さが分からない」、「なんかキモい」(全部自分の初聴き感想)となっても、いったん時間をおいてみてほしい。何処かでグッと、落っこちるタイミングが来る…かもしれない。名盤巡礼や追悼として聴くことを否定なんてもちろんしないが、そうした云々を払って、自分とそこに在るもの(=アルバム)を結んで、しっかり聴くとまた違った景色が見えるアーティストなのは間違いない。


書いていこうといても中々まとまらないので、記事を分けながら、ゆっくり更新していきたい。なんせ自主流通作やらインスト作を省いても余裕でフルアルバムが40近くあるのだ。関連作の数も膨大で、遺されたものは途方もない。時間をかけて、ゆっくりと…。
part 1は、デビュー作の「For you」からだ。プリンス、当時20歳(!)の記念作から振り返る。 (アルバム感想へ続く→)
     

コメント

No title

サム様 こんにちは

プリンスは一度いいな、と思ったアルバムでも
気分で受け付けなくなることも多い、というのが自分の付き合い方です。
過去に記事を書いたこともありましたが
熱心なファンではないかも。

やっぱり初期の頃が一番好きです。
分かりやすいので。

問題は「謎の記号」以降なんですよね。

これだけ好き嫌いが分かれる音楽を発表し続けるっていうのは
本当にすごいこと。

ただ
晩年のアルバムはシンプルな音楽性のものが多かったですね。

Re: No title

旧一呉太良 さん こんばんわ

(名前は変わっていますが)お久しぶりです。

> プリンスは一度いいな、と思ったアルバムでも
> 気分で受け付けなくなることも多い、というのが自分の付き合い方です。

とにかくクセが強いですよね。わかる気がします。

プリンスの好きな時期というのも人によってかなり分かれそうで楽しいですね。
初期を後回しにして聴いていたのですが、聴いてみると最初から完成されていて驚きました。
自分は「Rainbow Children」がすごく好きです。

> これだけ好き嫌いが分かれる音楽を発表し続けるっていうのは
> 本当にすごいこと。

そうですね…追悼記事などでもよく見かけますが、
ここまで自分を貫き通したというのは本当に凄いことなんだなと、遠巻きながら感じました。

年齢とともに音楽性もいい塩梅で落ち着いてきて、さぁ次はというところだったので、
やはりこの訃報は悲しすぎますね……。良い意味で老け込んでいない印象が強かったから余計に。

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プロフィール

サム

Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

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