Prince Album Review, Pt.1 初期① For you / Prince ~

前回、後追いの自分が聴いてきた、Princeのことという記事で書いたように、今回からはアルバムについて書いていきたいと思う。Part 1は、デビュー作である『For you 』と、2nd『Prince』。個人的には「この後」に思い入れがあるものの、まずは彼の初期からゆっくりと。
この2枚における、自己紹介として見せつけた現在にも続く音楽性と、その後立ち戻ることはなかったヒット路線、そしてアルバムのまとめ方。キャリア全体を俯瞰できる今、より面白い時期かもしれない。音としても、80年代よりこの時期の方が2016年の今としては馴染みやすく思う。

※ちなみに1st以前の活動として、別バンドに参加していた時のアルバムが残されているようです。デビューまでの詳しい経緯は、西寺郷太さんの『プリンス論』が分かりやすかったので、ぜひ。


それでは。

曲名の色について:赤(凄く良い)太字(良い)>普通 赤太字は名曲 、斜体はシングル or リードトラック、下線はベストトラック。評価は個人的なものです。


78年作 『For you』
01. For You 1:06
02. In Love 3:38
03. Soft and Wet 3:01
04. Crazy You 2:17
05. Just as Long as We're Together 6:24
06. Baby 3:09
07. My Love Is Forever 4:09
08. So Blue 4:26
09. I'm Yours 5:01

My name is Prince
「記念すべきデビュー作」というのは誰のファーストアルバムにもつけられるありふれた言葉だけれども、ことプリンスにかけてそれはまさに「記念すべき」と呼べるものだった。後のアルバムと比較すると地味な印象にとどまりかねない今作だが、これは自身の才能を世に知らしめんとする若者の野心作だ。

弱冠20歳にして音楽業界に譲らず勝ち取った、今も代名詞である「PRODUCED, ARRANGED, COMPOSED AND PERFORMED BY PRINCE 」の称号を記したジャケットカバー。複雑なアカペラ多重録音を導入に、R&Bにポップチューン、アコースティック調、往年のホーンアレンジをシンセに置いたお得意のディスコファンクにオールディーズ、メロウバラード、「こんなにギター、ベース、ドラムも出来るんだぜ」といわんばかりのライトハードロックで締める不遜なアルバム構成。20歳のプリンスが渾身を込めて制作したセルフ・イントロダクションアルバムだと思う。そうして見ると、タイトルの「For you」はこの上なくふさわしい。


自分は80s→00s→90sと各年代をある程度聴いたあとで今作を手にするという、”ザ・後追い”な聴き方をしたのだが、この時点で既に「原点」と呼べる音楽要素はだいたい出揃っていたことに、30年来の歴史、その始点を感じ割と感動した。後のストーリーを踏まえられる今では、デビュー以前、そして全盛期に至るまでの彼の音楽性・活動スタンスが垣間見え、よりおいしい作品になってるんじゃないだろうか。

個人的ベストトラックはtr6「Baby」。初期屈指のスイートメロディ、ふとしたリズムの緩急が抑えられない愛情まで表現するような、美しい曲構成のファルセットバラードです。幼いプリンスが理想としたジェームズ・ブラウンのバンドライブ演奏を夢見たようなアウトロを展開していく(バンドを従えていない当時のプリンスが頭の中でキメ打ちを指示する様が浮かぶようで微笑ましいが、これを一人でコツコツ編曲・演奏って割と泣ける)tr5も良いし、シンセとギターのバランス感覚だけで聴かすtr7も面白い。

とはいえ内容は、まだ大衆が求める「スター性」、批評家が筆を走らせるような「問題作」とはいかなかった。チャート結果は全米168位、R&Bチャート21位とイマイチで、この反応の悪さは「ジャンルとしてよく分からない一枚だった」ことが『プリンス論』にて指摘されている。そこで縮こまるのでなく、「これがPrince(自分)なんだ」と突き通し、戦い、認めさせたのがこの人の凄みだけれども、それはまだ先の話。
Rating : 62 / 100  ★★★




79年作 「Prince」
01. I Wanna Be Your Lover 5:49
02. Why You Wanna Treat Me So Bad? 3:49
03. Sexy Dancer 4:18
04. When We're Dancing Close and Slow 5:23
05. With You 4:00
06. Bambi 4:22
07. Still Waiting 4:12
08. I Feel for You 3:24
09. It's Gonna Be Lonely 5:27
分岐点、選ばれなかったその先
1stの物足りない売上から、セカンドの制作にはまず「お金」という現実的な問題が立ちはだかった。いきなり借金を負ったプリンスとしても、何より破格の契約を結んだワーナーとしても、ヒット作がほしかった。ということで今作は、自他ともに認める「狙った」一作である。前作と基本的な作風は似ているが、一聴して、「青年の切なく情熱的なラブソング集(なんてセンスのない形容だ…)といったイメージをアルバムに思い浮かべることができるのが反省を活かしたところか。Princeはあと二回、明確に「ヒット作」を必要としたと思うのだが、今作は”リスナーに合わせて"のヒットだったことは少し強調して書いておきたい。

ベストトラックはやはり初期の代表曲であり、全米11位、R&B1位!と初のヒットシングルとなった「I wanna be your lover」。EW&Fの名曲「Septenber」(78年発表なので、丁度前年にあたる)が、少年の青い恋心を綴ったラブレターとして生まれ変わったような曲調には、まさに”ヒットソング”の輝きを感じる。当時のプリンスは往年の生楽器の響きを避けるため、シンセサイザーの音色でホーンやブラスなどの楽器を巧みに代替していき、それがいわゆる「ミネアポリスサウンド」、「80年代の音」として確立していくわけだが、その萌芽にこの曲の魅力があるゴージャスとは言えない、でも確かに華がある軽妙な音の響きは、単にオールディーズではない、「若者のラブソング」として打ってつけの雰囲気を醸し出した。これが当時クールと捉えられたのか、ポップスマナーとして捉えられたのかは自分には分からないが、今聞いても気持ちのいい音だ。

ほかの曲も、ギターとシンセを絶妙に折り重ねたイントロが素晴らしいtr2、キレのいいカッティングとリズム隊のセンスが光るtr3、「ゲストミュージシャンを呼んだろう」と思わせる冴えたギターソロも随所で聴かせ、全体的に王道のグッドソングが並ぶ。前作では唐突だったハードロック調も、今回はちょうど中間に配置されることで良いアクセントとして機能。「Princeはあまり好きじゃないけどこのアルバムは好き」という人もいると思う(今聞き返すと、Princeの80年代作のどれより音が良いと思うし)。Mr.Childrenの『KIND OF LOVE』やRadioheadの『the Bends』よろしく、「もうそのアーティストが作ることはないであろう」特有の魅力を感じる(…よくある何気ない形容が不意に悲しく響くのはつらい)。アウトテイク集が出てしまうなら、ぜひこの辺りの路線を聴いてみたい。
Rating : 78 / 100  ★★★★


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見事アルバムはミリオンセラーに輝き、Princeの名は一気に広がった。ミュージシャンとしてまず成功を掴み、若者らしいラブソングを綴るポップミュージシャンとして順風満帆にキャリアを――と普通なるところで、この人は(この時点では間違いなく)”謎の変貌”を遂げてしまう(↑裏ジャケにすでに兆候が…)。結局この少年性を携えたキャッチー路線からは明確に外れていってしまったわけだが、このままの路線でいたらどうなってただろうか。同時代のR&B、ソウル、ポップアルバムを少し拾い上げて、そんなIFに思いをはせてみる。あるいは、生前のラストアルバムである「HitnRun Phase Two」が、奇しくもまさにそんな一作だったが、その帰結はこの連載の最後に取っておこう。


Narada Michael Walden / The Dance of Life (1979)
外さずに今の時代を取り込めるプロデューサーの、ディスコ時代をとらえた一作。60sまでのポップが70s中盤からの「ディスコ」によって「オールディーズ」にされたことが良くも悪くも(?)伝わってくる。アルバムとしても良いですよ。
https://www.youtube.com/watch?v=MVHX5OWXkjE


BOBBY WOMACK / The Poet (1981)
そして70sのディスコも「オールディーズ」のような扱いに吸収されていき、80sが訪れる。都会的なラブソングの名曲「If You Think You're Lonely Now」が有名だが、アルバム全体から70sから80sへ時代を移していくSoul, R&Bシーンが横目に伺えるヒット作です
(余談ながら、1979年は邦楽においてサザンオールスターズの「いとしのエリー」、ゴダイゴの「MONKEY MAGIC」が発売された年である。中々考えさせられる…)




さて、話を戻して…。幼いプリンスが憧れた一人に、"早熟マルチプレイヤー"、”自己プロデュースからの成功者”、”シンセサイザーの導入により新しい音楽を提示した”…と様々な点で目標像であったスティーヴィー・ワンダーがいる。彼は12歳(!?)でデビューし、22歳で創り上げた「Music of My Mind」(1972)によって音楽的な自我を手にし、その後伝説的な最盛期を迎えていくわけだが…。歴史的な語呂合わせが許されるなら、Princeも次作がちょうど22歳だった。転機。プリンス・ロジャー・ネルソンというミュージシャンから、"Prince"というアイコンへ。part2は、アマチュアにも音楽制作環境が整った今でこそより問題作である初期の名盤『Dirty mind』だ。(続く)
     

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サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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