The Field / The Follower (2016) 感想


the Fieldはいつもテンプレートのアートワークだけれど、この統一感は彼の音楽性を表しているようで自分はとても好き。ただ注文の際は注意。文字のカラーも黒っぽいなのが前作、白なのが今作です。国内盤は”帯のみ”、”ボーナストラックなし”のいわゆる[国内流通仕様]で残念仕様なので、フィジカルは安いものを選べばよし。

(凄く良い)>太字(良い)>普通 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック

トラックリスト
1. The Follower   9:56
2. Pink Sun  8:56
3. Monte Verità  10:34
4. Soft Streams   10:51
5. Raise the Dead   11:18
6. Reflecting Lights   14:05

Total length : 65:40

周回軌道上の外側へ
The Fieldことアクセル・ウィルナーも、もうだいぶ長いキャリアを積んできた。「シューゲイザーとテクノシーンの邂逅」と評され、代表作にして2000年代テクノの名盤となった1st『From here we go sublime』からももうすぐ10年の月日がたつ。あの心地よい白昼夢に陶酔させるようなループシークエンス、ミニマルテクノにシューゲイズの陽光を塗したようなサウンドスケープ、そして何よりそこから展開される、まるで歌もののブリッジのように印象的な第二旋律。この一枚で彼はクラブシーンのみならず、インディロック好きにもその音楽の魅力を届けた。自分もそこからのファンであり、その思い入れは深い。
(この一枚に関しては、音楽メディアele-kingの今作に対するレビューが短めながら良い内容で触れているのでぜひ。)
The Field - The Follower | ザ・フィールド、アクセル・ウィルナー | ele-king

続く4曲60分のEP『Sound of Light』(1stにサイケ色を強めた内容で、こちらも最高の一枚)でこの路線に完成を見た彼は、2nd、3rdとバンド編成を取り入れるなど徐々にアレンジの幅を広げていき……と一応続くのだが、1st以降のサウンド変遷にあるのは基本的に"強いて言えば"くらいの違いで、正味The Fieldの作曲は、本来テクノから最も離れているはずの音楽形態「ブルーズ」と違いない。どんな音が乗るかはともかく、一曲の構成、形式、さらに言えばコード進行の流れまで、ほぼテンプレートが完成されているのだ。ブルーズマンは「その上でどう聴かせるか」にスタイルや美学が問われるわけだが、The Fieldの音楽的な美学が目指すものは、一言で「心地よい反復の追求」それのみ。それは今も昔も間違いなく一貫しており、良くも悪くも時代と一線を画して一本道を追及するような創作姿勢には安定と充実を感じさせるも、自分は一人編成でもバンド編成でもブレなさすぎる彼の表現姿勢に、何か変化を期待していた。

しかしその音楽と同様、彼はグルグルと同じ所を回りつつも、微妙な変化をつけていくことで今までと異なる着地点を模索していたようだ。その試みは、四つ打ちビートの絶対的支配を解いて音をより自由に泳がせた変名プロジェクト「Loops Of Your Heart」(後述の関連作参考)で顕著となり、フィールドとしての円周外での成果がダークなサウンドで新境地を謳われた前作『Cupid's Head』(2013)で鳴らされた訳だが、そこからじっくり3年というインターバルを経た今作は、The Fieldが反復快楽主義、"その次"のステージを目指そうとした作品となった。



様々な音のかけらを群がらせ、「四つ打ち」と「反復」という魔法(メソッド)にかけて自身の美学を追及してきたのがこれまでのアルバムだ。しかし彼は今作において、「心地よい反復の追求」という自身の命題を表現者として展開、「ユートピアを見つけた人間が、同じ過ちを繰り返す」という神話由来のメッセージを掲げることで精神的な領域にサウンドスコープを合わせてきた(帯参考)。いつも通りその楽曲は基本的にループで構成されているが、今作はいつもの「反復(A→B→A→B…)で一曲」を多用するでなく、「ループを展開(A→A´→B→B´→C…)し完結」させることで、一曲一曲に物語性を産んでいる。始めに在ったものは、その一部を残しながらも徐々に変化していき、異物が混入していくことで、最終的に違う物体として(しかし同じ名前で)存在してしまう…。そんな感覚が今作で目指した所かもしれない。

ベストトラックは、ブライアン・イーノのAmbientシリーズを思わせるような桃源郷アンビエンスが不穏な警鐘に様変わりしてしまう、新境地のReflecting Lights。全編この新路線だったらもう少し評判も変わってたんじゃないかと思うが、とはいえ変わらずの職人芸を聴かす「Pink Sun」「Raise the Dead」もやはり良いので何とも言えないところではある…。匠の領域なのだ。


『THE FOLLOWER』と名付けた意図か、全体的に往年のデトロイト・テクノに近い手触りで、1st以降も指摘はできたシューゲイズ感覚は薄まった。更に言えば、1stにおける劇的なブリッジ部、3rdのミニマルループの快感といった要素に比べると、快楽性も即効性も今作はかなり落ちるが。ある意味ドローン的でもあり、直線と曲線が一筆書きで描かれていくその曲展開には、これまで彼が培ってきた反復快楽道の研究成果が如何なく発揮されているし、その展望が伺える。最初の印象はよくなかったが、聴きこんでいくうちに、よくもまぁこれだけの年月を一貫したサウンド設計と美学で、流行り廃りに目もくれず、かといって注目と評価も一定以上失わず、なおかつ発展させていけるものだと唸らされた。キャリア的には過渡期、スポットが当たりにくい作となってしまうのかもしれないが、彼の視線、創作姿勢はここでひとつの分岐を渡った(多分)。次作で聴かせてくれるだろう、更なる深化が楽しみだ。


Rating : 73 / 100  ★★★★



<関連作>

Loops of Your Heart / AND NEVER ENDING NIGHTS(2012)
アクセル・ウィルナーが『Looping State of Mind』と『Cupid's Head』の間にリリースした異空間アンビエント作。ビート意識を離したここでの自由な発想が、ジャケを黒くしてイメチェンした今のTHE FIELDの活動につながっている。
Loops Of Your Heart - Cries - YouTube


Lawrence / Yoyogi Park (2016)
ピーター・カーステンのプロジェクト、ローレンスの最新作。テクノやハウスの基本的な快楽原理を、「代々木公園」――東京の日常というテーマに添付し(まさかのYoyogi)、老舗のサウンド構築で聴かせる盤石の一枚。狙いや作風は違くとも、この手の人たちの原風景は同じということが分かる関連作。良い一枚ですよ。
Lawrence - Nightlife - YouTube
     

タグ: 16年 60分台

コメント

コメントの投稿


非公開コメント

プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

カテゴリ
Twitter
リンク
クリックで展開
NewCcounter