スピッツ / 醒めない(2016) 感想 


相変わらずズルいジャケット。アナログとかほしくなってしまう……。

太字(良い)>普通 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. 醒めない  (4:00)
02. みなと  (4:30)
03. 子グマ!子グマ!  (3:50)
04. コメット  (4:03)
05. ナサケモノ  (4:10)
06. グリーン  (3:34)
07. SJ  (3:18)
08. ハチの針  (4:10)
09. モニャモニャ  (3:56)
10. ガラクタ  (3:17)
11. ヒビスクス  (4:29)
12. ブチ  (3:05)
13. 雪風  (3:08)
14. こんにちは  (2:20)

Total length : 51:57

ネットの評判やインディ勢の中から再評価が進んでいるスピッツ。彼らももう10年くらい前から「変わらない魅力」という感じに捉えられているけれど、『三日月ロック』で到達を感じ、でもそこから更にバンドを続けることを選んだ彼らは、この10年を「バンドとして時代(シーン)と向き合う」ということを意識して活動してきた。

2000年代中期から吹き荒れて(小林武史が大いに乗っかっていった)ストリングスを取り入れて重さを求めた『スーベニア』と、そこでポップスにより戻した『さざなみCD』、あまりに皆がそうなってしまったので完全にストリングスを取っ払って見事エレキギターで代替してみせた『とげまる』、震災と向き合い歌う意味をもう一度考え直した『小さな生き物』。その時々のアングルや立ち位置は違うも、何かと向き合って・考えて動いてきたことが伝わるアルバム群だった。ここで過去のインタビュー記事をひとつ。
音楽と未来 ─ 自分の歌を聴きたいって言ってくれる人がいる限りは。(草野マサムネ) | TheFutureTimes


そして3年ぶりとなる新作、『醒めない』だ。今作は「今の邦ロックシーンを素直に受け止め、同一線上に自身の初期衝動となったロック初体験への憧憬を重ねる」という、この上なくポジティヴなスタンスから鳴らされたアルバムになった。「君を歌うよ」でも「君に届くまで」でも「負けないよ」でもなく、自身の音楽への醒めない思いから出発した今作の心地よさといったら。何より、バンド自身がこの演奏を全力で楽しめている感覚。スピッツには毎度のことながら、"コンセプト"と呼べるほど大それて掲げてもいないけど、全編に漂う陽性の瑞々しさだけでもう「最高!」と言いたくなってくる。

デビューから25年経て、なんでこうも気持ちよく音楽に取り組めるんだろう。「任せろ 醒めないままで君に せつなくて楽しいときをあげたい」なんて歌詞を、確かな気持ちを乗せて気負いもなく歌える限り、スピッツはシーンに君臨するでも懐古の対象でもなく、聴き手の隣に在り続けてくれると思う。マンネリや再生産に陥らないどころか、ここまで演奏がキラキラしているアルバムをこの年季で完成させていることが本当にうれしい。スピッツから最高のポップアルバムが届きました。
Rating : 84 / 100



作品の外側を書くのはそれくらいにして、今回は久しぶりに全曲に感想をつけていこうと思います。以下駄文。


 醒めない
本作のリードトラック。タイトルを見たときはシューゲイザー的なイメージを膨らませたけれど、チェリーをバイテンしたような、ちょっとパンキーにロックンロールのスウィングを聴かせる一曲。ホーンが冴えてる。「"せつなくて"楽しいときをあげたい」のこれぞスピッツな感覚たるや。例を挙げるとキリがないほど、マサムネは常套句に一言加えるのが抜群に上手い。「最初ガーンとなった」って音の乗せ方もすごし。

 みなと
リードシングル。名曲。『とげまる』の延長線上、その時の経験値がこの上なく活かされたアレンジだと思う。トレモロギターとリヴァーブのかかったアコギ、ベースラインだけで波を浮かばせるようなイントロから魅せられるし、三輪テツヤの四方八方に散らしたギターの彩りはみなとから見えている海、転じて馳せた思いの情景のようで本当に綺麗。「君ともう一度会うために作った歌さ」から、曲が進んで(気持ちが募って)「君ともう一度会うための大事な歌さ」に語気が強まるだけでもう泣ける。ベストトラックです。ちなみに客演した澤部 渡さんの曲はこちら。スカート / CALL 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】 - YouTube


 子グマ!子グマ!
トラックリスト発表時、ファンに衝撃を走らせた曲名。しかしフタを開けてみると今の邦ロックのお手本的な代物でした。直接的なキーワードは出ずも最大限の名残惜しさがにじみ、イケてる男性像とそうはなれない自分の間を行き来した結果、耐えきれず(?)祭囃子になだれ込んでしまうのがアラフィフおじさんらしいか。「惜しかった思い出」ってどんなんだ。

 コメット
スピッツ得意の進行で紡いだ耳馴染みの良いリードトラック。今作の良さとして歌詞がしっかり耳に入ってくるというのがあるけど、そうして聴こえてくる「黄色い金魚のままでいられたけど 恋するついでに人になった」とか「また会うための生き物に ありがとうって言うから」なんて詞、マサムネはやっぱり想像力のカプセルのみ込み過ぎだと思う。

 ナサケモノ
君の名前つけた人はすごくセンスがいい」が最高。「足にもなる メシも作る 涙はいただく」(←名台詞)とまで歌っているのに、情けない獣でおわっているのが、あぁ。淡々とした展開ながらオルタナふりかけの効いた今作のベストリリック曲

 グリーン
パワーポップもスピッツの王道路線として定着したけど、曲調としてはちょっと飽和感があり。でも「君が望むのならば全てを壊せる」でギターソロに入るのはズルい。

 SJ
マイナー調のコンパクトなミディアムバラード。最小限の展開で起伏とスケールをもたらす匠的3分間。

 ハチの針
アルバム曲の中ではこれが一番好き。踊りだしてしまうような16分リフから一気にエイトビートのサビになだれ込むJ-ROCKの美学よ……。サビメロは三日月ロックの頃を思い出させ、リズム隊も随所に好プレーをきかす。「どうしたらいい?これでもいい?ハニー」の語感のよさはヤバいし、これを素面で歌えるのもオジさん開き直り過ぎててヤバい。「シラフで恥を投げ捨て宣言しましょう!そんで最低限君に届けばいいなと」 せやな。カッコいいです。

 モニャモニャ
このあたりのストレート(グリーン)→チェンジアップ→カットボール→スローカーブ(いまここ)みたいな配球の意図は一体……。描いてる世界は違うも「田舎の生活」に通じるドリーミィでフォーキーな曲調。素敵そうな空間に「燃え尽きるまで」なんて一語が潜むあたりに何かを感じさせる。

 ガラクタ 
そしてど真ん中ストレート。無理すんな!と言いたくなる曲調ながら、なぜかこのバンドはこれが許されるというか、いまだにハマってる。ここぞと暴れ走る田村のベースが曲をグイグイ引っ張っていく。
 
 ヒビスクス
このへんの曲順意地悪では。。「夜を駆ける」ばりのコード進行で真打登場、ハイライトのひとつ。サビに向けて一気に加速していく邦楽的快感よ……(デジャヴ)。何よりサビメロの瑞々しさに驚いたし、この若々しさはただごとじゃない。地味に本作最長、それでも4:29なのが最近の傾向。

 ブチ
「名前をつけてやる」あたり、かなり初期を感じさせる、グルーヴに言葉遊びをのっけた遊び心ある一曲。やっぱり流れがおかしい笑。

 雪風
昨年の配信シングル。正直リリース時は「若葉」~「シロクマ」あたりと同じく、良いけど何か足りないみたいな印象がぬぐえなかったけれど、アルバムの中で最終曲前に配置されると、問いかけるような歌詞が非常にグッくる。「まだ歌っていけるかい?」から続くラストは――

 こんにちわ
これもすごいタイトルだけれども。「一曲目は醒めない、最後はこんにちわ」と決められていただけあって、思いを再確認するような歌詞になっている。「みそか」や「君は太陽」に追従する内容とは思うも、心から楽しそうに自由なタクトで描かれてきた本作の13曲を聴いた後だと実感もひとしお。「こんな日」っていうのが、少しでも多くありますように。最後はこの記事もアルバムと同じ締め方にしましょう。

「心に生えた足でどこまでも 歩いていけるんだと気が付いて 
 こんな日のために僕は歩いている おもろくて脆い星の背中を」

     

タグ: 16年 50分台

コメント

No title

いいアルバムですよね。
遅ればせながら昨日から聴き始めたのですが、サムさんの全曲感想読みながら聴くとさらに深く味わえます。
ハチの針のサビの語感、最高ですね。

Re: No title

derasuさん、コメントありがとうございます。

「醒めない」は快作でしたね。
何より今回は演奏の明るさに惹かれました。
全曲のほうは完全にファン感想ですが、聴きこむ時何かしらのキッカケになれば幸いです!

ハチの針、タフなギターリフにキャッチーな歌詞と、まさにスピッツ流ロック節という感じです。
ガラクタなどといい、親父臭くなりそうな歌詞でも若々しく歌えてしまうマサムネはズルい…。


> いいアルバムですよね。
> 遅ればせながら昨日から聴き始めたのですが、サムさんの全曲感想読みながら聴くとさらに深く味わえます。
> ハチの針のサビの語感、最高ですね。

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プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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