American Football / american football (Ⅱ) 感想 ~17年ぶりのリリースに寄せて


リアルタイムでこんな瞬間に巡り合うとは思ってなかった。あの家の中へはいれるなんて……。

太字(良い)>普通 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Where Are We Now? – 4:44
02. My Instincts Are the Enemy – 4:49
03. Home Is Where the Haunt Is – 3:26
04. Born to Lose – 4:54
05. I've Been So Lost for So Long – 4:36
06. Give Me the Gun – 3:24
07. I Need a Drink (Or Two or Three) – 4:58
08. Desire Gets in the Way – 3:28
09. Everyone Is Dressed Up – 3:39

Total length : 37:58
<国内盤ボーナストラック>
10. letters & packages (live in Tokyo)
11. you know i should be leaving soon(live in Tokyo) 


アメリカン・フットボール。1999年にファーストアルバムを発売しただけで、2000年代のエモ、マス・ポストロックに多大な影響を与えた、界隈のレジェンド・バンド。17年ぶりだっていうのに初っ端から過去を持ちだすのもあれだけど、やっぱりまずはこの一曲で始めたい。「Never Meant」。
 
もし今回の盛り上がりからこのバンドに興味をもったという方がいたら、下のアートワークの家に思いをはせつつ、とりあえず最初の二曲を聴いてみてほしい。1999年。今ではメソッド化された「オープン・メジャー・アドナインス・チューニング」のマジック、繊細で流麗なツインギターアルペジオの調べ、不思議と自然な変拍子感覚、心の隙間にすっと吹きこまれるようなトランペット、マイク・キンセラの切実な歌声、微妙な立ち位置の関係を紡いだ歌詞。この音を聴いた時の感覚を誰かが「エモい」と名付けたんじゃないのってくらい、夏の終わり、秋の黄昏、そんな景色をもった作品。

自分を含めた当時を知らない世代にも、インターネットを通じてその音楽はじんわり自然に浸透していった気がする。その結果、シーンと断絶してアメフトの存在だけが一人歩きしていたりもするけど、とにかくその音楽は今も垣根を越えて多くのリスナーに届いて――や、見つけられていった。そして話は2016年の今に至る。彼らはリユニオンの反響に連ねてこんな素敵なプレゼントを用意してくれた。アメフト、奇跡のセカンドアルバム発売と。



17年、マイク・キンセラ = Owenの視点の話
17年ぶりだけれども、そこには空白でなくちゃんと歴史がある。国内盤のライナーノーツにキンセラ界隈あたりは触れられているので、ここではフロントマンである「マイク・キンセラ」、そしてソロ活動名義「Owen」について少し書きたそうと思う。

今でこそ信じられないけれど、アメフトの音楽は「意識的にポスト・ハードコア、当時のエモを避けた」アプローチを志して生まれた。その試みが見事「エモ」に還元されたのだけれど、そこにはあったのは「シーンの外」に立とうとしたマイク・キンセラの視点だ。そして彼はバンド解散後にOwenとしてソロ活動を開始させる。アメフトをより内省的に発展させたような音楽性は一応「インディ・フォーク」という形で括られているも、彼特有のギターワークはフォークの枠に収まるものじゃないし、でも同時にその歌心は確かに往年のフォークやカントリーに通じるものだった。だからOwenの音楽は(微妙な語感だけど)いうなれば「エモ・フォーク」のようなハイブリットになっている。たとえば4作目の『At Home with Owen』(2006)は隠れた名作で、The Velvet Undergroundのとろけるようなカバーに、ポストロック的なアプローチも光る一枚で、関連作としてあげたい。

意図せず(というか自分の方法論を貫いた結果)Owenはフォークという「ジャンルの外」にもたっていた。マイク・キンセラの音楽がバンドから電子音まで飛んでいけるのは、そんな視線の距離から生まれているんだと思う。話がそれるが、そんなOwenから、「スローコア」へ話を進めることもできる。歌ものに寄った時の「Dakota Suite」や、「Red House Painters」あたりを持ってきて聴いてみると、「フォーク」~「エモ」へのグラデーションがあって、その間に「スローコア」が浮かび上がってくる。この人はいろんな所の"間"に在る。
 Owen / 4th (2006)


満を持して、American Football Ⅱ
話は戻って、今作は「Owen」じゃなくて、エモの金字塔となった「americ anfootball」の新作だ。そのコードワークスやメロディは完全にOwenとして辿ってきた道に地続き。でもそれ以上に、「アメフトの黄金律をしっかりなぞっている」感覚がある。そう書くと媚びているようだけど、blurの復帰作「The Magic Whip」と同じで、それがバンド・リスナー共にポジティヴなものとして受け止められる、そんな幸福な関係をもった作品に感じた。そして、ここでも彼はバンド(=アメフト)を外(=Owen)から俯瞰している訳だ。

楽曲の話。まず、前作ではあまり見られなかった力強いエイトビートに胸が高鳴る。随所に置かれたさりげないキーボードの貢献度にはOwen的な成熟を感じるし、図らずも「Honestly」に通じる構成を見せる「Born to lose」、相変わらずの冴えない男が音楽によって昇華される「I've been so ~」も良い。音はタフになっても、このあたりはそのまんまだ。そして地味ながら「Give me the gun」、間を取って空間を鳴らすギター、対比してブリッジミュートのギターが跳ねるアウトロは新境地で、何よりドラムだけのパートですら楽曲の雰囲気が変わらないバンドサウンド、あるいは録音に舌を巻く。そして最終曲で入ってくるトランペットだ。これはもうファーストを踏まえていると「ニクい」としか言いようがないし、「ズルい」でもいいと思う。泣ける。


長々書いたけども、一曲目を再生してみて、10数秒もかけてあのギタートーンがゆっくりとこちらに近づいてきた時に、大体全部が伝わるはず。ジャケットのイメージに引っ張られ過ぎてるけど(だって毎度素敵なんだもんな)、年月を経て距離が近づいたというか、「招いてくれた」ような、この優しいエモアルバムにもう、地に伏した。Whitneyもだけど、いかに喧噪外でも良い音楽が実っているかってすごく思う。素晴らしいリユニオン・アルバムでした。「Where are we now?」



<関連記事>
【インタビュー】アメリカン・フットボール17年振りの新作で完全復活!エモ界のレジェンドの現在とは? | Qetic
「もともと17年前に一人の女の子に恋焦がれていた男の子が、その後どう成長してどうなったかを知りたいと感じたところから始まったんだ。」の素晴らしいさ。そしてボソッと続く「それは僕自身の現実とも繋がっているわけだけど」にこのバンドの普遍性を感じたり。

1st (1999)
やっぱりファーストとセットで聴きたいですね。
     

タグ: 16年 40分台 80点台 深夜

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プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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