Plus/Minus tour2017@渋谷 2000年前後の過渡期インディロック、とジャック・ニコルソン

+/- {PLUS/MINUS} Japan Tour 2017 | & records
7年ぶりのPlus/Minus(+/-)の来日、そしてブッチャーズに寄せて。ライブ感想でもないよく分からない内容ですが更新します。+/-が活動していたころ……2017年現在とはまた違う2000年前後のインディーバンドの折衷感、そして個人的な思い出話の二本です。


括れなかった2000年代前後の過渡期インディ・ロック
アンコールでの再会、ブッチャーズの思い出



2000年代前半、過渡期の空気と「+/-」

「+/ー」は、VERSUSから端を発し、2000年初頭に結成したエモ発のロック・バンドだ。上の一曲で彼らが良いバンドであることは伝わると思うが、如何にもな曲を書く一方で、いま思い返すとこのバンドはすこし変わっていた。基本的には「インディ・ロック」に括られるだろうその音楽は、エモ直系のギターも鳴り響くし、サンプリングから童話的な音を広げたかと思えば、エレクトロニカ風味の楽曲あり、マスロックを思わせる変拍子あり、そして轟音の代名詞のようなブッチャーズ楽曲をキュート(!)な電子音やオーケストラでリアレンジしてしまったりもする。 

『Kid A』に代表されるように、2000年代前後はエレクトロニカ~ポスト・ロックの間で音楽が揺れていた時期だ(もちろんそのカウンターとして、ロックンロールに突き抜けたのもいた)。そんな中リリースされた彼らのファーストは、電子音と生演奏が、「デジ・ロック」のように劇薬的な交配でも、のちの「フォークトロニカ」のような自然な共存でもなく、何とも形容しにくいバンドサウンドとして鳴らされている。ここで比較にあがるのがThe NotwistThe Microphonesだ。彼らの楽曲は「オルタナ」と呼ぶには90年代的でなく、「ポストロック」ほど観念的すぎもせず、単純に「ポップ」「ロック」と括るにも濁りがある、良い意味で”よく分からない”ものだった。その音は「rock」「indie-folk」「Electronica」「emo」「Post rock」「lo-fi」「psychedelic」などと、言葉の足し算で様々な領域を埋め合わせるように何となくカテゴライズされ、歴史のなかの見えづらいところに名盤として今も在る。(下のアルバム名から曲リンクに飛べます)。
 The Notwist / Neon Golden(2003)
The Microphones / The Glow Pt.2 (2001)
余談だけどこの頃のpitchforkの評価は結構あてになると思う。「The Moon」はローファイシューゲの名曲

枠がぼやけていたためにムーブメントとして記録されることもなかったが、ポスト・プロダクション、録音技術、ラップトップの発展とともに、様々な要素をバンド演奏と混ぜようという意識は、この頃の「ポスト・ロック」、「エレクトロニカ」棚をディスクユニオンで掘るとよく伝わってくる。ここに2000年前後、過渡期の空気がある。その試行錯誤のなかで例をあげるなら、「Tristeza」はのちの「Album Leaf」、「Fridge」は「Four tet」と、音楽性を1ジャンルに特化させることで確固たる評価を得ていき、シーンは成熟に向かっていった。この時期を経て、00年代後半~現在のインディーシーンは形成されている。さらに自由度が増し、その一方で完成度の高い――しっかりと各要素が溶け合った作品だらけになった、幸福で、意地悪く書くなら優等生的な時代だ。




7年ぶりの来日実現
話を戻して、「+/ー」は2000年代前半から、そんな過渡期のなかで活動を続けてきた(からちょっと変な)バンドだ。彼らの6年ぶりとなる"新"作が『Jumping the Tracks 』(2014)。時代も気分も変わってシンプルなバンド演奏に立ち戻った、超良いエモ・アルバムだった。そして3年ごし、純粋な好意以外ありえないだろうこのタイミングでツアーの企画が成立。関係者の方、バンドに敬礼したい。


ここまでで大体書ききったので本編についてサクッとかくと、想像以上にカッコ良かった。何よりクリスの爆発的なドラムプレイ!「良いエモバンドの花形はドラマー」という謎格言が浮かんだ。コーラス・ワークがとても重要なバンドなんだなということに改めて気づいて、この辺の要素はどんなバンドを参照しているのか掘りたくなった。新作のモードもあって最初に書いたような「変な」楽曲はあまり聞けなかったが、公演を締めた「Trapped Under Ice Floes」なんて、お客さんの年齢層があと5……いや10年若かったらモッシュが(多分)起きていたであろう熱演が聴けた。いつかは計り知れないけれど、次も可能な限りまた行きたい。






「+/-」とブッチャーズの絆、ジャックニコルソン
二本目。ここからは本当に個人的な話になります。

いまでこそ月の楽しみとばかりにライブチケットを握りしめていますが、自分は、音楽は好きだけども「ライブを見に行く」ということにすごい懐疑的なリスナーでした。それは、大勢で手を振り上げたりモッシュするより、「家でひとり音楽を聴きこむのが"正しい"」と思っていたから(昔の話です)。

そんな偏見が変わっていったのがTwitterで、いつみてもライブの楽しさが流れ込んでくるこれに触発されて、憑き物がとれたんです。そうなると絶対生で見たい!ってバンドがあって、それがBloodthirsty Butchers でした。今はyoutubeからなくなっていますが、ライジング・サンのあの動画ですよ。「7月/July」。他もとんでもないものばかりだけど、あの動画を高校生の時みて、本当に、この映像と演奏に詰まっているよく分からない何か全てに感動してしまった。どんなに起きていてもいつもなら何も起きない暗い部屋のディスプレイの前ですら。

そしてTwitter始めだしたのと合わせて2013年、その時は北海道の札幌に住んでて大学生。JOIN ALIVEが「THE SEA AND CAKE」「Yo La Tengo」という、普通なら100%北海道にまで来ないインディーバンドを呼び寄せてて、その年、その中にブッチャーズも連なっていた。
これは四の五の言わず、絶対行かなきゃ!と思ったとき、あの訃報が入ってきました。




好きなミュージシャンの突然の訃報っていうのは、フジファブリックの志村正彦さんに続いて、リアルタイム的には多分ふたりめで。特に今回は、なまじいつもみたいに中古で過去を追ってるんじゃなかったから、まず驚いて、そして後から、どっと悲しくなった。ふと思い出すたびに、もうそれが叶わないことの重さを感じた。そしてそこからですね、見たいと思ったものはなるべく絶対見に行こうと。今では、結構色々しながら定期的にライブ会場に足を運んでいます。


また話を戻して、だからもう、よく分からない理由でライブを敬遠してたせいで、自分がブッチャーズの演奏をリアルの大音量で聴く・観ることなんて絶対できなかった、はずだったんですよ。でも、この日、2017年の2月24日だけは違った


対バンには、ブッチャーズの図太い和音Bass「射守矢 雄」さんのユニットが、そしてツアーには半数以上の公演でGt「田渕 ひさ子」さん率いるtoddleが参加していた。そしてメインアクトはスプリット盤でボーカルカバーしている「+/-」。そしてアンコールで「ブッチャーズ ハ エイエンデス」のMCから始まったのが、「JACK NICOLSON」。そう、この日は、高校のころずっと想像していたあの音の片鱗に触れることができる、特別な夜だったんです。イントロのあのギタートーン、ノイズ(今もキレキレで感動した)、そしてアウトロのベース、そんな光景を、顔を見合わせながら本当に楽しそうに弾いてくれた+/-。サマソニでRadioheadの「Let down」の裏声を聴いた時以来、もうライブで泣くことなんてないだろうと思ってたけれど、目が潤んでしまった。最初から最後までずっと踊って、というか体が勝手に動いてて、そのまま音に身を預けていた。


本当にありがとう、それしか言葉が見つからないというか、いや、自分の中にあった大事なものと言葉を交わせた気がした。すごく良い夜でした。改めてこのツアーに携わった方々に、こんな場所から勝手ながら感謝したい。(余談ですが、+/-は小松さん(Dr)のいる公演でもカバーしたそうです。だから、日こそ変われど残る3人と演った訳で、もうね、言葉に詰まる。)

こんなの見た後だと、しょぼい愚痴なんか言ってる場合じゃない。こっちも仕事頑張ります。


「行くさ!!」

     

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サム

Author:サム
旧一人音楽座談会。
「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。普段はTwitter↓にいます。

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