The Jesus and Mary Chain / Damage and Joy(2017) 感想 -オルタナってカントリー


この、デザイン決めた後にバンド名なんとか詰め込んだ感がね。
ライナーノーツ(対訳なし)はご祝儀的に「彼らは帰還したと同時に再びシーンの最前線に踊り出そうとしていることがひしひしと伝わってきた」と書いてるけど、いやいや……。

太字(良い)>黒 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
1. Amputation  3:24
2. War on Peace  4:34
3. All Things Pass  4:34
4. Always Sad  2:52
5. Songs for a Secret  3:21 (Sister Vanillaへのジム提供曲再演)
6. The Two of Us  4:12
7. Los Feliz (Blues and Greens)  4:54
8. Mood Rider  4:04
9. Presidici (Et Chapaquiditch)  3:36
10. Get on Home  3:31
11. Facing Up to the Facts  3:05
12. Simian Split  4:14
13. Black and Blues  3:23
14. Can't Stop the Rock  3:19 (Sister Vanillaへのウィリアム提供曲再演)

Total length  53:01

「オルタナティヴ・ロック」って新手のカントリー
SPOONの新作に対するele-kingの評の中に、彼らの試みを称賛し、その他とを比較するものとしてこんな一文があった。

純粋に音の冒険を楽しむのが目的なら現在ロックはもはや限りなく下位にある「ジャンル」
Spoon - Hot Thoughts | ele-king

この言葉にうーんと唸りつつ、実際「ロックの中で音の冒険を楽しめた時期」って、直近だといつ頃が想像されるんだろう(2010年代前後のインディ?)。「音の冒険を楽しむ」って見方自体、ロックよりはヒップホップやR&Bに分がありそうだ。もちろんそれができるロックは今も間違いなくあって、記事にあるSPOONAlabama Shakesならその参照や録音の職人芸に、あるいはFoxygenの新作は出鱈目に複数の時代を繋いだ音楽絵巻に、ほかでも掘り下げれば刺激や面白さは見出せると思う。

ところで、そんなプロの仕事や豊富な知識に裏打ちされた本物じゃなくて、なまじ一発芸の閃きから何時の時代の誰が聴いても出オチで「これ……何?」って音を出したバンドもいる。ジーザス・アンド・メリー・チェイン(以下JAMC、ジザメリ)。音の冒険というか、初見殺しの隠しダンジョンに入ってしまったような「Upside down」。、Princeの「Purple Rain」がシングルチャートを上り詰めていたよな1984年の11月、このファースト・インパクトはその裏路地、インディチャート側にしっかりと記録・記憶された。自分のバンド認識ふくめて、その辺は以前の記事を見てもらえれば。
時代に煙をあてたロックバンド「The Jesus and Mary Chain」の話


[1/4] - JAMCの復活作って、どう
そんな伝説を持った彼らが19年ぶりの新作をリリースした。2007年の再結成から数えても10年、待望、だったのかもしれない。後追いの自分としても「ジザメリの新譜が店頭に展開されている光景」には不思議な感動があった。ただ……充実したソロ活動が見えていたPixiesやblur、American footballといった面々からは、各々が過ごしてきた時間が歩みを止めていたものにどうフィードバックされるのかという期待があったけども、JAMCの場合は……正直微妙なライン。「新作嬉しい!」、同時に「何を期待して……」という謎の葛藤も少しありつつ、本作を手に取った。



[2/4] - ギターロックの化石
『Honey's Dead』以降のJAMCは、完全に惰性のバンドだ。前作『Munki』(1998)の、バンド本位とでもいうような締まりのない内容は、UKだけで『OK Computer』『Mezzanine』『Dig Your Own Hole』あたりが並ぶ時代にあって、全英47位と振るわなかった。しかし、そこから19年を経て更に様変わりした音楽シーンを前にしてなお、当然の如くこの兄弟の作曲や演奏に変化はない。一気にその空白を埋めてきたアート・リンゼイの新譜(傑作!)とちがって、これは20,30年ものの化石だ(時がたってその価値が増したのかどうかは分からないが)。そんな今作、初再生の感想は「癒される」だった。良し悪し飲んだ感覚、もう少し踏み込んで書くなら「馴染み深さ」と「無刺激」で、その聴き心地は無害の域にある。

だけどもその内容は、ちょっと元気はなくなっているけど、結構良い。久々にかますかと「サイコキャンディ2」にもせず、3rd以降の彼らの流れをラフに鳴らした"らしい"仕上がりで、ファンには堪らないやつ。「Amputation」の"低音()な打ち込み、一瞬で耳コピできるパワーコード、裏声でUh"、今の時代にこれだけを武器にリード曲を発表してしまうあたり逆に貫禄を感じる。たまのノイズギターに煽られ、「Song For A Secret」「Los Feliz (Blues and Greens)」(この2曲がとても良い)あたりのメロディは沁み、女性ボーカルの差し込み方に相変わらずのイデアを感じさせ。化石といったけれど、聴きなれた音・メロディ・アレンジ、安心感と満足感。ここには"塩梅"がある。で、このアルバム(バンド)、ジャンルは一応「オルタナティヴ・ロック」に括られるらしい。オルタナってなんだっけ……。



[3/4] - ノー・オルタナティヴ?
「オルタナティヴ・ロック」って、そもそもは「80年代の煌びやかなメジャーシーンに対するカウンター(代替)のロック」として浸透した語だ。実際に鳴っていたのは、ジザメリを含め、70年代後半からのポスト・パンク、ハードコアあたりを脈々と受け継ぎ自覚的に捻ってきたインディシーンの空気。そこに新しい言葉を必要とするほどの"注目"が集まったから、その外観を「グランジ」、大雑把な音楽的括りを「オルタナティヴ」として言葉付け(後付け)した……と思っている。直訳を無視するなら、ここでいう"Alternative"は「(これまでとは違う)今時の、クールな」って冠詞だった。そこから四半世紀すぎた2017年、その響きはどうなっているか。

今の「オルタナティヴ・ロック」は、存在としてはたぶん「カントリー」に近い。悲劇で区切りがつけられたグランジに対して、この言葉は90年代全体……続いてそのフォロワー、大ブレイクしたColdplayやMuseまで適当に括ったりして、ある意味日本のCDバブルのような引きずり方で延命を重ねてきた。エレクトロニカで「ポスト」、90年代前を参照したら「リバイバル」、2000年代中期から新しい冠詞として(再)浸透した「インディ」(Kurt Vileの記事へリンク)を踏まえた今なお、「オルタナティヴ」は老舗として在る。ただ、その響きにもう「今時の」という感覚は受けづらい。いまこの言葉に向かって捻りなく音を鳴らすなら、それは共感、郷愁、後追いなら憧憬、「シンパシー・ロック」とか言った方が近いのかもしれない。


[4/4] -オルタナティヴなやつら、時代
こう書いていくと、定型文として「(オルタナティヴ・)ロックは死んだ……」と続きそうだが、そうは思わない。これは昔生まれた言葉の寿命が尽きただけだし、音楽自体は古びるとともに参照点になって、そういう時代錯誤な場所から出発して閃きひとつで突き抜けてしまう奴らは今も昔もいる。重要なのは言葉じゃなくてそういう人たちだ。そう、それこそ昔いた――「オールディーズをパンクに押さえつけて金切りノイズ撒き散らしすことで一時代の基になった」バンドとか。そしてそのバンドはもう、突き抜けたやつらではなくなった。音楽性も(自分たちが昔繋いだ道から)保守的なものになった。だけども、このアルバムに残っている単純な曲の良さ、この30年間で「良いメロディ」っていう感覚は変わらないなとも思わせる。そしてこのバンド、というか兄弟に限っては、音楽性とは別に、もうひとつの魅力がある。

彼らが今作に持ってきたパンチラインで締めたい。最終曲の「Can't Stop the Rock」なんてこの兄弟は絶対マジには思ってないだろうが、シーンに合わせて自分を変える気は一切ないふてぶてしさ、そんなオルタナティヴ、そしてその佇まい――たぶん魅力に連なった今作のUKチャート16位というリベンジ成功には、オォ……と唸る。この疎い自分でもわかるくらい、真っ当に聴いてこれは今シーンの最前線に来る音楽じゃ全くない。それを期待なんかしてなかった。でも、冒険というにはスリルに欠けるかもしれないが、時代を再訪したり、思い描いてみる、そんな楽しみも音楽にはある。
Rating : 70 / 100  ★★★★




関連作 音楽性でなく、佇まいとして2作。

The Strokes / Is this it? (2001)
00s以降に、姿勢として正しく「オルタナ」と言えそうなカウンターをメインストリームにまで決めてきたロックバンド。ポスト・ロックやらなんやらの時代にまさしく時代錯誤な風貌と音楽性で登場、その後その影響を公言するバンドが次々とブレイク、という所で今度はニューウェーブを奇妙な形で取り込んで、またしても異物に姿を変貌し君臨中。


SPOON / They want my soul (2014)
バンドのルーツはまさしく90sオルタナだったんだけれども、その呪縛を振り切って音楽性を研鑽・アップデートし続けた結果、見事全米トップ5にまで辿り着いたある意味JAMCと対極の存在。外部プロデューサー「デイヴ・フリッドマン」との邂逅、懐古の更新。こういう人たちがいるから、ロックについては改めて「オルタナ」と付け直しちゃダメだという気がする。
     

タグ: 17年 50分台

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サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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