スピッツ 全フルアルバム感想 -中期①後半-

スピッツの全フルアルバムを、(独断で)初期・中期・後期と分けて振り返ります。
中期①前半についてはこちらからどうぞ。
曲の色付けは赤太字(名曲)赤字(大好きな曲)太字(良曲)みたいな感じで、下線曲が作品の個人的ベストトラックです。
SPITZ_1994.jpg 1995年


中期①後半
前回の後半戦です。オリコンチャートTOP30の常連になったところから……ですね。ではさっそく。

注・今回の2作、自分はリマスタ盤でなく旧盤しか聴いたことがありません。なので感想は旧盤準拠です。リマスタと旧盤の区別は品番でつきます。POCHが旧盤=ポリドール、UPCHがリマスタ盤=ユニバーサルです。帯などを見て判断し、リマスタ盤を手に入れましょう。


 

ロビンソン (1995/04/05)
アルバムではないですが、特別枠としてこの一曲について。苦節というか、彼らはついに大ブレイクを果たします。シングル「ロビンソン」のリリースです。初のオリコントップ10入り(最高位は4位)から、延々とロングセラーを続け、累計160万超シングル年間9位!)の特大ヒット(参考までに、「青い車」で累計は5万枚)。ここからスピッツの(売上的)黄金期が始まるのです。


いまさら何をいわんやという所ではありますが、ファン・他リスナーも認めるスピッツの代表曲です。何より、「誰も触れない二人だけの国」、そこへのキッカケがすごい。

同じセリフ同じ時 思わず口にするような 
ありふれたこの魔法でつくり上げたよ

少女漫画でも見開きは使わないだろうワンシーン。これだけでこの曲は違う世界を作り、更には宇宙の風にまで乗ってしまう。この跳躍に正宗の世界観は凝縮されています。そしてM7のセピアな雰囲気、王道進行にのせたサビの広がりが、この"二人だけの国"を聴き手にも届けてくれる。名曲です。


正直、「ここで100万という規模までブレイクしなかったらどうなってたんだろう?」とよく考えます。ここから今に至るまで、事務所的にも邦楽シーン的にもトップアーティストとして活動を続けている訳ですが、その重荷・制約はやはりあるはず。初期のように、自由気ままにやっていたらどうなってたのかな……と想像してしまう(逆に解散しちゃったかもしれないけど)。しかしてスピッツはポップフィールドで戦うことを選択し、その選択が実を結んでブレイクにたどり着いたわけで、色々思いはせる所です。




ハチミツハチミツ
(2002/10/16)
スピッツ

その素顔は初回限定盤に
01. ハチミツ – 3:05 06. トンガリ'95 – 3:04 11. 君と暮らせたら – 3:16
02. 涙がキラリ☆ – 3:58 07. あじさい通り – 5:12  
03. 歩き出せ、クローバー – 4:25 08. ロビンソン – 4:20  
04. ルナルナ – 3:39 09. Y – 4:23  
05. 愛のことば – 4:21 10. グラスホッパー – 3:28 収録時間 43分22秒
 

95年作。6th。総評・★★★★☆
大ブレイクでもスピッツは風呂敷を広げない

快進撃は止まりません。続く「涙がキラリ☆」も100万枚近い累計を記録。倍プッシュよろしくではすまない人気の爆発、そんなブレイクスルー作が『ハチミツ』。その累計は170万にもなりました。「スピッツのアルバムで何が一番好き?」というのは非常に難しい問いですが、今作を選ぶという人は多いのではないでしょうか。大ヒット曲収録ほか、アルバム曲も粒揃いです。不思議な力強さがある「歩きだせ、クローバ-」、ドラマ主題歌化も決まった切ない「愛のことば」、ライブチューン「トンガリ'95」、その声が胸を打つ「Y」など、『Crispy!』のころと比べても、明らかに音に確信が宿っており、曲の芯がとても強い

にしても、ブレイクしたというのに全編とおしての飾り気のなさは実に「らしい」ですね。いきなり歌詞が分かりやすくなるでもなく、音楽性が大ヒットを意識するものに変わるでもなく。不器用なまでにスケールを広げない……。この辺、同時代のMr. Childrenの大ブレイク作にして異色作、明らかに身の丈にあっていないところまで自身を膨らませようとした『Atomic Heart』と比較したくなります。ところで、94~95年といえば英国でblurとoasisを中心とした「ブリットポップ」という大ムーブメントが起きており、初期ならさりげなくフィードバックさせそうなものですが、その影響がまるでないことに、ブレとは違う、スタンスの変化を感じて寂しさを覚えたり。

ともかくも、疑いようなき代表作です。これだけでひとつ記事になるので、今回はこの辺で。ここでスピッツは、本当にメジャーバンドとして「戻れなくなった」。ここで得た人気と重荷が次作へ、その反動が次々作へと連なっていきます。




インディゴ地平線インディゴ地平線
(2002/10/16)
スピッツ

若干地味なジャケ
01. 花泥棒 (1:50) 06. ナナへの気持ち (3:42) 11. 夕陽が笑う、君も笑う (3:27)
02. 初恋クレイジー (4:09) 07. 虹を越えて (4:13) 12. チェリー (4.19)
03. インディゴ地平線 (4:20) 08. バニーガール (3:49)  
04. (4:47) 09. ほうき星 (4:11)  
05. ハヤテ (3:15) 10. マフラーマン (3:37) 収録時間 45分47秒

96年作。7th。総評・★★★★
重圧の中作られたのは、THE J-POPな好盤

96年はまさにスピッツの年でした。まずは1月にドラマ「白線流し」がスタート、主題歌「空も飛べるはず」がリバイバル大ヒットで150万に迫る売上を記録。4月にはカラオケ人気も未だ根強い代表曲「チェリ-」が160万超の大ヒット、9月リリース「渚」でシングル初登場1位累計80万弱の売上を記録、そのままの勢いで10月に今作「インディゴ地平線」を発売し135万ほどを売り上げるミリオンヒットに…と、簡単に羅列するだけでも恐ろしいほどの活躍ぶりだったのです。

持論として、最も「初期」と正反対の位置にあるのがこのアルバムだと思っています。今回の4作すべてに言えることですが、(初期の趣味的な)洋楽からの影響がどんどん薄れている。勿論それが悪いというわけではなく、「変化が起きていた」、ということです。その始発点『Crispy!』で述べた、「ボーカルメロディの比重」が最も高い…つまりスピッツの中で最もJ-POPらしい作品が今作かと。2年ほどで、気づけば常にビッグセールスを期待されるほど大きな存在になっていたスピッツ。その重圧の中で作られたのがこのアルバムかと思うと、また聴き方が変わってくるかと思います。

内容はコンパクトポップチューンがズラリ。どれも草野さんのハイトーンクリーンボイスが映えたメロディラインで非常に気持ちいいです。また、音がモコモコとアナログ感に包まれているのも本作の特徴ですね。ベストトラックは単純故究極みたいな「。ブレイク後はストレートな言葉も増やしてきた正宗ですが、「柔らかい日々が波の音に染まる」なんて唸る。全編非常にキャッチーで、ロックファン的には音の弱さに躊躇がありつつも、コレを初めてのスピッツとして勧めるのもアリかと。
そしてスピッツは、ある意味「行き過ぎた」この作品を明確なカウンター対象とすることで次の一手を放つのでした。




お疲れ様です。毎度長くてすみません…。今回は売れ線を目指し、ついにブレイクを果たしたスピッツの軌跡を追いました。Crispy!までの世間からの冷たい風、そこからの大跳躍はいつ見てもしみじみします。このブレイク後から現在に至るまでは、シングルカットの「流れ星」を除けば全作品がオリコントップ10に入っているわけで、10連敗のち何十連勝して街が光るというかなんというか…良かったなぁと。今では想像できない「1年1アルバム」の制作ペースも驚異的ですね。

しかしそんなスピッツも足を止めて周りを見渡す時期が来ました。次回は、その「セールス的絶頂期の中で、ロックバンドとしてどうするのか?」を問うようなあの2作品に触れたいと思います。
続きは中期②にて。
     

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プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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