時代に煙をふかしたロックバンド「The Jesus and Mary Chain」の話

<2013/05/18 初版>
<2016/11/21 全編書き直し>
<2017/04/25 関連バンドを追加>


JesusMary.jpg
1977年、セックス・ピストルズはそれまでのオールド・ロックンロールをバケツをぶちまけるように塗り替えていった。そして70年代末、アンダーグラウンドに広がっていった「ポスト・パンク」の波紋……サッチャー政権、失業率、ライブハウスに溜まっていく暴力、シーンは新しい活気を求めていた。そこにひょっこりと現れたのが彼らだ。

ジーザス&メリーチェイン(以下時々JAMC)。それはピストルズの登場から8年が経過した、1985年のことだった。甘いメロディに金切り音のようなノイズサウンド、ポップス黄金期である50 - 60年代に実った果実に神経毒を注ぎ込んだような世紀末的バブルガム・ポップス、デビューアルバム『Psychocandy』。幾多の暴動と共に巻き上がったセンセーショナルな衝撃は、たった一枚で彼らの名声を決定づけた。同時にそれは、オールドファッションになりかけていた音楽が、メソッドひとつで一瞬に息を吹き返す劇的な瞬間でもあった。その鮮烈な音楽性は、後のシューゲイザー、ノイズ・ポップ、90年代のオルタナティヴ・ロックへ広がっていき、今も大きな影響を与え続けている。
<完>



ちょっと待て
多分、このバンドについてまじめに書こうとするとこんな感じの紹介文が出来上がって終わる。概ね正しい気もするが、この記事では彼らをこんな感じに済まさないで、もう少しちゃんとキャリアを追っていきたいと思う。

1.このバンド、ハイプでは?
2.最初に聴くなら
3.ディスコグラフィ
4.関連バンド(ルーツ、シューゲイザー御三家、JAMCが好きなら)
 
 

このバンド、ハイプでは?
ジーザス&メリーチェインほど奇妙な立ち位置に退いていったバンドはそうない。よく言われる謳い文句、その全てに注意書きがついてしまうのだ。「1stの衝撃」――彼らは喧噪にまいってあの異様なノイズの衣を早々に捨ててしまった。そしてその後で時たま出てくるギターノイズは往年のファズの延長が多い。「ノイズポップ(かオルタナ)の元祖」――パンクを踏んでいるかで明確に異なるものの、その根っこにはロックの裏番長The Velvet Undergroundがチラついてしまう。「シューゲイザーの起源」――ノイズを新しい音楽ジャンルの次元まで高めたのは、関連バンドにて後述する後進のバンドだ(JAMCは甘いメロディとノイズって謎の黄金比の発見こそ重要で、音的にはポストパンクやノイズパンクの延長だと思うし)。更に彼らは劇的なドラマもなくひっそり解散、で今は再結成している。なんかこう……微妙。近い年代のJoy DivisionやThe Smithsに比べ、その活動はあまりに人間的過ぎた←それが魅力のひとつ

じゃあ彼らは一作目が偶然革新的だっただけの凡百バンドだったのか?となると、そうは思わなくて。衝撃度以外の尺ではかるなら、このバンドのピークは間違いなくファースト以降にある。だけども、後の歴史にも代表作と残るのはファーストだけな気はするし、他の名作と呼ばれる作品群に比べてサイコキャンディは明らかにニセモノだし、アルバム一枚ですら曲調が被りまくっていき、この兄弟のバンド演奏に対する姿勢はクソ以外の何物でもなく、それと同時にでこんなクールなロックバンドもそういない。矛盾してるけど本当にそう思う。

主要メンバー
ジム・リード (ギター・ボーカル) 
ウィリアム・リード (ギター・ボーカル) 

この兄弟が今回の主役だ。

初めて聴くなら
1stから2曲と、後は1曲ずつ抜粋していくとこんな感じかと。これで彼らの大雑把な音楽性の変化は追える。にしても、いつ聴いてもJust like honey、一番びびるのはそのドラム音……。


「面倒なのはいいから、結局どれが一番なの?」という方には、『Barbed Wire Kisses』、邦題「キスは罠」がオススメ。3rdまでのB面や未発表曲をまとめた編集盤で、このバンドが「セックス・ピストルズ以来の衝撃」と言われた理由のすべてはこの一枚に集約されている。「Upside down」はもとより、頭のネジのとんだノイズカバー、そしていま聴いてもカッコいいダウンテンポ・ノイズロックンロール「Sidewalking」など、衝撃度でいうならサイコキャンディを越える
Barbed Wire Kisses(1988)
……でも、もう少し興味をもってもらえるなら、ディスコグラフィを眺めてアルバムを手に取ってみてほしい。「シューゲイザー、オルタナの始祖!」みたいなテンプレキャッチコピーに落とし込んで咀嚼する前に、どうぞ。



ディスコグラフィ(抜粋)
1st. Psychocandy (1985) ★★★★
ロック史にたたずむ名(迷?)盤。何はともあれジザメリといえば今作。
2nd. Darklands (1987) ★★★★★ 
限界状態から何とか作り上げた美しいアルバム。一部からは最高傑作説あり。
3rd. Automatic (1989) ★★★☆ 
自信をつけてしまい、半ば開き直ってワイルドにきめた転換作。ドラムマシーンは偉大。
4th. Honey's Dead (1992)  ★★★★
ついにノイズを自己表現にまで高めた、彼らの到達作。集大成であり人気も高い(自分調べ)。「Sundown」はこのバンドのベストトラックかと。個人的にはここがピーク。
5th. Stoned & Dethroned (1994) ★★★
一気に素朴、アコースティックになった一作。「枯れた」という言葉が思いっきり悪い意味で鳴った結果、「燃え尽きた」に近い印象すら受ける。何しろ収録曲が多すぎた。
6th. Munki (1998) ★★★★
解散作で話を締めたい。駄作ではないものの、安定というより停滞というような平凡な作……(2014年時)と思っていたが、今は印象が変わった。ベストとは思わないけども、このアルバムにJAMCのすべてがあるように思う。シーンを完全に無視、やれることしかやらず、面倒な華々しさに辿り着かなかったThe Jesus and Mary Chain。このひと達は結局、引きこもり肌で、社会になじむ気がなくて、無気力で……かといって犯罪には興味のないアウトサイダーは、滅茶苦茶だけど、だから最高に歪な形のロックンロール・スターだった。ひたすら締まりなく垂れ流される自堕落な17曲、この図太さは痛快すぎる。時代にタバコの煙をふかしたクールなギターロック。


……そして2017年!ついにというか新作が来ました。過去記事に進行形の追加更新ができることは何よりの喜びです。かなり拗らせてますが、記事は下からどうぞ。
7th. Damage and Joy(2017) -オルタナってカントリー



オマケ・関連バンド
いつか別記事になおすとして、今回は走り書きで。

ルーツ
やっぱり最初はThe Ronettesの「Be My Baby」から始めたい。このイントロもじり、今の感覚でこそ凄いクールだけれど、当時はどんな受け止められ方だったのか……。続けてはThe Velvet Underground。ノイズという意味では2nd、JAMCから選ぶなら「Sunday Morning」この一曲。この2曲が20年の時を経て融合、「Just like honey」になった…と言ったらカッコつけすぎか。カントリー的なグッドメロディはあっても、フォークのメロディ(語り)には決して近づかなかったのが、パンク後のバンド感覚らしい。かといってリード兄弟にはIggy Popのエナジーも、The Ramonesのような明るさも、The Clashのような挑戦心もなかったのが絶妙(?)だった。
「フィルスペクター」「ブライアン・ウィルソン」といったワードも出せるには出せるが、流石にJAMCにその語句は恐れ多いんじゃないか……。
  

シューゲイザー御三家 
甘いメロディ + ノイズの黄金比は、JAMCというよりも、後進の「シューゲイザー」と呼ばれたアーティストたちが完成させた。深く掘ると死ぬのでここでは御三家を(※ひとによって選出が違います)。この時は誰も言葉に凝り固まってはいなくて、それぞれが全く違う道に進んでいってしまうのが黎明期の面白さ。Slowdiveが3rd選びなのは自分の趣味です。
My Bloody Valentine - Sometimes
Ride- Vapour Trail
Slowdive - Crazy For You
  

JAMCが好きなら
ここではもう少し時計の針を進めた所から。

Supercar - Sun Rider
スーパーカーは挙げたい。最高のセンスでジザメリ、マンチェ、オアシスほかの洋楽趣味をいなした初期作群はきっと良い出会いとなるはず。あとこの年代だと、くるりのカップリングに「青写真」という曲があって、サイコキャンディのような無意味なノイズをポップソングの表現として昇華した、淡さとどうしようもなさの詰まった大名曲だと思っているので、機会があればぜひ……。
  

・The Horrors - Mirror's Image
The Raveonettes - Dead Sound
Dum Dum Girls - Season In Hell
No Joy - E
ざっくばらんに4バンド。このなかでも、一番危険性を継いだのはホラーズの2nd(2009年の傑作)。その他、80sにJAMCが思い出した往年のポップスメロディは、パンク + ノイズを踏んだJAMCのあと、更にギターポップ、シューゲイザー、ドリームポップ、パワーポップ再興と通過して00sのインディ勢に引き継がれていった。この辺のキラキラ感が好きなら、そのまま2000年代後期のインディバンドを漁ると宝探し状態になります。
   

関連バンドはコメントにても募集です。「このバンド!」というのがあればぜひ教えてください!
     

タグ: アーティスト紹介記事

コメント

是非

アルバム紹介の続きをお願いします。とつても素晴らしいです。

Re: 是非

オゼヒロ さん、コメントありがとうございます。

嬉しい言葉です!ありがとうございます。
すぐには更新できなさそうですが、
どこかのタイミングで全アルバム感想記事でも書きたいと思います。
またいつか当ブログにいらして頂けたら幸いです…。

> アルバム紹介の続きをお願いします。とつても素晴らしいです。

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プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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