The Jesus and Mary Chain / Psychocandy (1985) 感想 ―不真面目な奇跡

(2016/11/25 書き直し)

サイコ・キャンディサイコ・キャンディ
(1997/07/25)
ジーザス&メリー・チェイン

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割かし有名なジャケ。漂うカルト感、屈折した雰囲気がこのバンドらしさを良く出している。

太字(良い)>黒 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック

トラックリスト
01. Just Like Honey 3:03
02. The Living End 2:16
03. Taste the Floor 2:56
04. The Hardest Walk 2:40
05. Cut Dead 2:47
06. In a Hole 3:02
07. Taste of Cindy 1:42
08. Never Understand 2:57
09. Inside Me 3:09
10. Sowing Seeds 2:50
11. My Little Underground 2:31
12. You Trip Me Up 2:26
13. Something's Wrong 4:01
14. It's So Hard 2:37

Total length : 38:55

不敬で不敵な虚無の騒音
説明不要の有名作。80年代の名盤といえば…といった見出しには必ず出てくるし、一般的にもジザメリと言えばコレと言う一枚だ。これが一体どんな代物になったかある程度まじめに書いたものは、紹介記事の冒頭を読んでもらえればと思うが、折に触れたように当ブログではこれを名盤扱いはしない。実際、一部のシュゲイザー過激派からは「マイブラの前座」なんて言われる始末だ。何故だろうか?

まずこのアルバムの音楽性から見てみよう。曲はアップかミディアムテンポかの違いはあるにせよ大体全部一緒だ。古典的なコード進行から繰り出される甘めのメロディライン+耳をつんざくようなフィードバックノイズ以上。14曲も収録されているが、7曲目あたりで全ての楽曲パターンは露呈する(後半は清々しいほどのネタ切れ感を聴かせる)。「ポップなメロディとノイズの共存」との評も、単に並走しているだけでどう考えても溶け合ってない。中でもドラムとベースのやる気のなさは異常で、怒られない程度適当に働くコンビニ店員程の仕事しかしていない。

それなのに、一体全体何でこのアルバムに未だ一部の人(そこには自分も含まれる)を惹きつけられるのか。


Noise is...
そもそも今作のアイデンティティであるノイズ=不協和音はどんな風に使われてきたか。ベルベッツはスタジオを実験室に見立ててノイズから音楽自体の表現領域を拡大した。JAMCの前シーンであるポスト・パンク勢の取り組みも言わずもがなだ。ソニック・ユースはノイズにメッセージを代弁させたし、マイブラは別世界を作り出した。エレクトロニカでもグリッチ・ノイズのOvalに代表されるように、「ノイズ」の扱いかたはアーティストの命題だ。時代、耳が進むことで、今までノイズ扱いだったものがどんどん「音」として許容されていくこと、そこには大きな意味がある。そろそろゲシュタルト崩壊してきそうだが、このアルバムの象徴であるノイズには何の意味も意匠も込められていない。それは単に、そして明らかに邪魔な音だった。

そしてそこにストーリーがある。元々彼らは「仕事なんてしたくない」とバンドを始め、ありえないようなノイズサウンドを撒き散らしていた。そこにとあるNMEのレビュアーが「このライブはピストルズ以来の衝撃」と書いた――1980年代の英国は多くの暴動が起こる危うい状況にあった。その言葉に多くの聴衆が"騒ぎ"を求めて集まった。その空気を読み取ったバンドは本質を理解し、大衆が望むとおり挑発的な態度をとって話題を振りまいた。その無気力で挑発的な佇まい、ギターノイズは一種の服装であって、その結果、世にも奇妙な「凶悪ノイズ+激甘ポップス」がアンダーグラウンドから産まれた。彼らのノイズは凶悪だったが、それ以上に意味を失った虚無を孕んだもので、そしてそれがまさに時代の空気だった。アルバムはゴールドディスクを獲得する大ヒットとなり、JAMCは一躍時代の寵児となった――。

「You never understanding. You never understanding me yeah」(アンタは分かっちゃいない、アンタに俺が分かるはずないのさ)
―― 「NEVER UNDERSTAND」より




フマジメなリード
時代背景はともかく、このアルバムを聴いて、「なんだこんなもんただの持ち上げられたクソ作品じゃねーか」と思うのは間違いなく正しい。でも……。この籠り切った録音や奇妙なスネアに乗っかる、締まりなく垂れ流され続けるギターノイズ、クソ適当なベース、から導かれる確かなポップソングたち。めちゃくちゃ古典的な楽曲に異常なノイズを乗せただけで、一気にすべてがモダンにアップデートされてしまった奇跡――バンドとしての切磋琢磨、演奏力といったフツーの価値観を一手でブチ抜いてしまうような不真面目な奇跡、そこには確かにどうしようもない魅力があって、そこに自分は痺れる。「ハーモニー」なんて言葉を超えた響き、というかスタイルが示されてる。そしてこの奇跡が、後進のまじめなアーティストによって拾われ、ちゃんとした傑作に鳴り替えられていくわけだ。
The Jesus and Mary Chain - Interview + Live London 1985 - YouTube

騒ぎに目をつけ、メソッドと佇まいだけで時代に立ってしまう。この痛快すぎるやりかた、成り行き、彼らは実際ここまではピストルズだった。ただし彼らは、時代にツバを吐きかけるようなことに興味はなかったし、そんなにやる気もなく、何より根がビジネスマンでなかった。だからJAMCは劇的な解散に至るでもなく、プレッシャーにつぶされてしまい、その不思議なキャリアを歩んでいくことになるのだった。
Rating : 80 / 100  ★★★★


次作(ダークランズ)へ続く。

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タグ: 80s 30分台 有名作 秀作 デビュー・アルバム

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プロフィール

サム

Author:サム
旧「一人音楽座談会」。
音楽に限らず、作品やアーティストに対する検索結果がもっと充実したらという気持ちで更新しています。「もう一回聴いてみよう」「こんなのもあるのか」が好きで、「これだけ聴けばいい」が嫌い。
背景はBOCの「Tomorrow's harvest」。Twitterは↓。

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